2分でわかるアメリカ

2013/05/14ブルームバーグのスパイ疑惑


金融情報の巨人ブルームバーグが顧客の個人情報に幅広くアクセスしていたとのスキャンダルが大きくなっています。

 きっかけは9日付けのタブロイド紙ニューヨーク・ポストの記事です。ブルームバーグのスタッフが、顧客の誰が、どの機能を何度使っているかなどを詳細に把握していることをゴールドマン・サックスが発見、個人情報を巡りブルームバーグと対立しているとの報道です。 

ポストの記事を後追いする形でニューヨーク・タイムズなどが大きく報じました。ブルームバーグには2400人の記者がいますが、その内の多くが顧客のターミナルの使用状況をみて記事を書いているとしています。JPモルガン・チェースが巨額の損失を被った「ロンドンの鯨」が発覚した去年、ブルームバーグの記者が「損失を出したトレーダーがターミナルに長くアクセスしていないが、解雇されたのか」と問い合わせたこともあったとも伝えられました。

2つのモニターがあるブルームバーグのターミナルは、世界の金融機関や投資家のデファクト・スタンダードと言えるほど無くてはならない存在です。契約によって差があるのですが、利用料金は一人当たり年2万ドル(約200万円)と高額ですが、世界中で31万5000人が利用しています。

ニュースの他、株式、債券、そして外国為替などの売買、企業情報、チャットやメールなど通信手段に幅広く使われています。ソロモンスミスバーニーのトレーダーだったニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏が1981年に創業した会社ですが、市長自身は2001年にオペレーションから外れています。88%の株式を保有するオーナーではありますが。

投資家にとって特定の情報へのアクセスやポジションなど「手の内」が他人に知られるのは死活問題です。報道が事実であれば、相場を動かすことさえあるブルームバーグの記者が一線を超えていたことになります。法的な問題というより、ジャーナリストの倫理の問題です。

ブルームバーグのターミナルは、金融機関だけでなく、FRBをはじめとする各国の中央銀行や他の政府機関なども利用しています。報道をきっかけにFRBと財務省が本格的な調査をはじめました。中央銀行のオペレーションの動きや内部の対話をブルームバーグの記者が覗いていたとするとゾッとします。ブルームバーグを巡るスキャンダル。さらに拡大する予感がします。

[MAY 13, 2013] No 0105272

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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