2分でわかるアメリカ

2013/05/07ロック業界、まだCD買っている国を狙え


アメリカ連邦の政府機関である商務省国際貿易局が、新たな輸出支援としてロック・ミュージックを後押ししているという記事が週末のウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されました。

商務省はこれまで、トラクターや機械、エレベーターなどの業界に輸出促進のための補助金を出してきました。初めてロック・ミュージックの独立系レーベルの団体に補助金を出し、独立系音楽各社のトップが、アジアを中心に貿易ミッションを行ったという記事です。独立系、つまりインディーの規模は小さそうに聞こえますが、アメリカの音楽市場全体の4分の1を占める大産業です。

いかにもアメリカらしいと思って記事を読みはじめたのですが、少し違う背景が見えてきました。

世界最大のアメリカの音楽市場はデジタル化が進んでいます。iPodやiPhoneにダウンロードするデジタル配信での売上が全体の58%を稼ぎ出しています。CDなどパッケージ商品の売上高は「雀の涙」、コンサートやグッズ商品の販売で売上高を保っています。ただ、違法に無料でダウンロードする人が相変わらず多く、音楽ソフトの売上高は10年前の約120億ドルから約70億ドルに大幅に減少しました。

インディー・レーベルの貿易ミッションで、韓国、香港、台湾などでいくつもの商談が成立したとウォール・ストリート・ジャーナルが伝えています。しかし、本当の狙いは別のアジアの国にあります。どこだと思いますか。

 世界第2位の経済大国の中国ではなく日本です。国際レコード産業連盟の統計によりますと、日本の音楽市場でデジタル配信が占める割合は17%に過ぎないということです。日本人は世界で最もCDを買っているのです。記念品をつけてプレミア価格で販売されるCDが人気で、日本の音楽市場の規模が来年にもアメリカを追い越す可能性があるそうです。 

一種の「ガラパゴス」なのか。日本人は世界の主要国の中で飛び抜けて物欲が強い、もしくは空気みたいなデジタルではなく物理的なモノにこだわるのかもしれません。映画やテレビ番組もそうですが、日本の複雑な権利関係や既得権を持つ大手企業の反発、古い商習慣もデジタル配信が伸びない背景にあるとの指摘があります。日本政府は7月からTPP交渉に参加します。農業や金融の分野などでアメリカとの摩擦が予想されますが、「音楽」も議題に上るかもしれません。

[MAY 06, 2013] No 0105267

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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