2分でわかるアメリカ

2013/05/02大金持っているのに大借金


今週のウォール街はアップルの話題一色です。170億ドル(約1兆7000億円)もの社債を売り出すためです。2009年2月に医薬品会社ロシュ・ホールディングが起債した165億ドルを上回る過去最大規模の社債、つまり会社の借金です。  

アップルはキャッシュ・リッチな会社として知られています。バランスシートには、1700億ドル(約17兆円)の現金が計上されています。ただ、アメリカの税金を回避するため、約1000億ドル(約10兆円)は海外の銀行口座においています。近い将来にルールが変更され、海外の現金をアメリカ本国に送金するものとみられていますが、社債を発行することで節税効果があるようです。

アップルの社債の格付けは、ムーディーズがAa1、S&PがAA-Plusで、いずれも最上級のAAA(トリプルA)の一段下です。しかし、大量の現金を保有し財務体質が強いため、3年物固定の金利はアメリカ政府が発行する国債にわずか0.20%上乗せしただけ、5年物固定は米国債より0.36%高いだけ、10年債は米10年国債と比べ0.73%上乗せされる見通しでいずれも低金利。

トリプルAのマイクロソフトも先週社債を起債しましたが、米10年国債の利回りに0.70%上乗せしました。アップル債はこれに並ぶ可能性があります。人気が高いからです。ウォール街が大歓迎しているほか、世界の投資家から旺盛な需要がありそうです。

アップルやマイクロソフトなどキャッシュ・リッチな優良企業が相次いで社債を発行するのは、歴史的な超低金利が背景です。大金を持っているのに借金をするのは、いかにも金融大国のアメリカの企業の発想だと思います。

アップルが社債を発行するのは1994年2月以来のこと。当時の金利は6.5%でしたので、いまのアップルがいかに高く評価されているか、いかに安く資金を調達できるかがわかります。

アップルは、2015年までに総額1000億ドル(約10兆円)を株主に還元する計画です。社債で調達した資金は株式配当や自社株買いに使う計画です。故スティーブ・ジョブズ氏は、現金は製品開発に使い配当を出さないことに徹しました。その結果、iPod、iPhone、そしてiPadといった革新的な製品が誕生しました。今回のアップルの動きは、スティーブ・ジョブズの時代が完全に終わったことを示している気がします。

[MAY 01, 2013] No 0105264

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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