2分でわかるアメリカ

2013/05/01遅すぎた法案


アマゾン・ドット・コム。ジェフ・ベゾフ氏がアメリカ西海岸ワシントン州のシアトルに1994年に創設した電子商取引の世界最大手です。ちなみに最初に登録された社名はカダブラ・ドット・コム。翌1995年に世界最大の流域を持つブラジルのアマゾン川にちなみ現在の社名に変更されました。

アマゾンがなぜ成功したか。一般の本屋さんでは扱わない「売れない本」を含め裾野の広い分野の本を販売する「ロングテール理論」に基づいたマーケティング、短時間で受注から流通までを処理するITを駆使した物流システム、そして、店舗を持たないために実現した大幅な値引きなどが挙げられます。

いずれも成功の要因ですが、もうひとつ大きな要因があります。ワシントン州以外の顧客は、売上税を払わなくてもよいということです。具体的には、カリフォルニア州にあるロサンゼルスで買い物をした際、一般の本屋では「本の価格+売上税9.25%」ですが、アマゾンで買った場合は「値引きされた本の価格」だけで、最終的な支払額に大きな違いがでます。ワシントン州に本社を置いた大きな理由の1つでもあります。

売上税は日本の消費税に相当するもの。ただし、州税であるため、ワシントン州の会社であるアマゾンはカリフォル二ア州の売上税を徴収する義務がないのです。「物理的な拠点を持たない州での売上税徴収を義務づければ、小売業者に負担となる」との1992年の最高裁の判断が根拠となっています。

 正確に言うと、カリフォルニアの場合は「USED TAX」、つまり使用する人が払う税があり、アマゾンで買い物をした分の売上税は「自己申告」で納税する必要があります。しかし、現実には自己申告する人はほとんどいません。結果として、アマゾンは大きく成長、一方、全米の州政府は財政難が深刻化する要因になりました。 

アメリカの上院は先月、ネット小売業者から売上税を徴収する法案を可決しました。下院も近く審議、20年以上続いた「ネット小売の無税状態が終焉を迎える方向です。ニューヨーク・タイムズは「遅すぎた」とする記事を掲載しました。アマゾンが先週発表した決算では、1-3月期の売上が日本円で1兆6000億円もある一方で、小規模な小売店は既に廃業してしまったからです。

アマゾンはアメリカの他、ヨーロッパや日本など9カ国で事業展開、本だけではなく幅広い商品を扱うデパートに発展、そして電子書籍キンドルなどが普及、売上税のルールが変わってもビクともしない巨人に成長しました。アマゾンの強さは当面続くとみられますが、今度は小規模なネット小売業者が危ないかもしれません

[April 30, 2013] No 0105263

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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