2分でわかるアメリカ

2013/04/27「常識シリーズ28」こんなに違う報道


ジャーナリスト時代の同僚の間で、大手新聞と福島県の地方紙の報道の違いが話題になっている。

東京電力の福島第一原子力発電所で地下貯水槽から放射性物質を含む汚染水が相次いで漏洩した問題。原子力規制委員会は今月19日、試算結果を公表した。読売新聞は翌20日の朝刊で「汚染水、海洋流出は10年後」との見出しで報じた。東電が「遮水壁」で防げるとのサブ見出しがついている。一方、福島民報は「10年後、沿岸部を汚染」「濃度、法令限度超え」とトップで報じた。

読売新聞を読んだ読者は「汚染水の漏洩は10年先まで大丈夫」だと受け止め、福島民報を読んだ人は「高濃度の汚染水が沿岸部に広がる危機的な状況」と解釈した。記事の本文に大きな違いはないが、トーンがあまりにも違う。フェイスブック上で広がっている話題だが、フレンドから「悪意を感じる」とのコメントもあった。日本の大手メディアは、政府や権力にバイアスがかかる傾向があると言わざるを得ない。福島民報の整理部は地元の視点で見出しをつけた。

日本の主要メディアの報道のトーンが、欧米メディアと違うことも少なくない。

2012年5月に米ワシントン郊外で開かれたG8首脳会議。日本の大手メディアは例外なく「成長と財政再建で一致した」と報じた。これに対し、ウォール・ストリート・ジャーナルやフィナンシャル・タイムズは「成長と財政再建で意見が対立した」と結論づけた。日本政府関係者によるブリーフィングから得た情報を中心にした報道、そして、参加した各国首脳から幅広く取材した違いが出た可能性がある。語学力の差が影響したかもしれない。

今週来日したOECDのグリア事務総長の日本記者クラブでの会見に関する報道にも違いがあった。日本の大手メディアが「OECD事務総長がアベノミクスを評価した」と報じたのに対し、フィナンシャル・タイムズは「OECDが日本の巨額債務を警告した」と伝えた。

 アベノミクスのブレインである東京大学大学院の伊藤元重教授は、海外に出張した際に読む現地の新聞のトーンが日本とは違うことが時々あると著書で指摘している。報道を通じた日本と世界の認識ギャップは広がるばかり。世界の圧倒的多数は広い意味で英語圏。日本の「ガラパゴス」の背景の1つが見えた気がする。 

[April 26, 2013] No 0105263

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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