2分でわかるアメリカ

2013/04/20「常識シリーズ27」鎖国体験


私的な理由で一時帰国した。この機会を利用して2つの用事を済ませることにした。自動車免許証の更新と株式の整理。免許は期限まで8カ月もあったが、海外に居住している証明を提出しスムーズに更新できた。問題は2つ目。  

株式の整理とは、保有している2つの銘柄を信託銀行から証券会社に移す作業。前に勤めていた会社の社員持ち株会で取得した株式など2銘柄が電子化に伴い信託銀行の特別口座で管理されている。

海外に居住している日本人は日本国内で証券口座を開設できない。どの証券会社に連絡しても駄目だった。「法律ですか」と質問したが、納得のいく説明は返ってこなかった。「本人確認法」がひっかかるらしい。外国に住んでいても本人を確認する方法はいくつもある。現に、警察は本人確認をしたから免許を更新した。

渡航前に開いたネット証券の口座を持っていた。ただし、海外に住んでいるため口座は凍結されている。アクセスできない。信託銀行から2つの銘柄を移したいと連絡したが、「移せるが売却は出来ない」と言われた。帰国するまで口座は「凍結」すると言う。「大きな損失の可能性がある」と質問すると、「そうなります」との答え。

実家の母を常任代理人に指定、2つの銘柄を母の証券口座へ移すこともトライした。信託銀行に電話した。最初は「名義が違うから無理です」と言われた。食い下がると、後で電話すると言う。2時間ほどして電話がかかってきた。「母の口座を持つ証券会社の方からOKであれば受けます」。責任は第三者に転嫁する作戦か。その後に証券会社の担当者と何度も電話で話した。担当者はあらゆる部署とやり取りをしたようだが、滞在中に結論は出なかった。

日本が7月にもTPPの交渉へ参加することになった。安倍首相は、日本企業の海外進出と同時に、海外からの投資を呼び込めるチャンスだと力説する。米国の証券会社では、日本に住む日本人でも口座を開設できる。米国の銀行も同じ。取引はオンラインだから国境がない。日本の証券会社は、海外に住む日本人に鎖国政策をとっている。TPPに参加したからといって、こんな日本に投資する国はあるのか。

[April 19, 2013] No 0105256

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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