2分でわかるアメリカ

2013/04/13「常識シリーズ26」Japan’s Trap


作家の高嶋哲夫氏が、インフレ率2%を目指した日銀の金融緩和策についてツイッターに投稿した。「日銀。黒田、白川。やっていることは、真逆。もし、このまま成功すれば、前の日銀総裁以下幹部はバカで脳なしってことになるけど」

自民党の安倍晋三政権が進める「アベノミクス」。安倍首相の路線を金融政策サイドからサポートする日銀の黒田総裁。人気カジュアルブランドのアバクロをもじって「アベクロ」という造語まで誕生した日本の政策は過去の政権と比べ明らかに大胆で、積極的。世界で注目を集めた。  

「アベクロ」について概ね歓迎している。コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授とプリンストン大学のポール・クルーグマン教授。ノーベル経済学賞を受賞した2人のアメリカの経済学者は「アベクロ」を高く評価。特に、クルーグマン教授の評価は米国でも反響を呼んだ。

ポール・クルーグマン教授は1998年5月にJapan’s Trap(日本がはまった罠)という論文を発表した。クルーグマン教授は、バブル後の日本経済を分析、日本が流動性の罠にはまっていると指摘した。「流動性の罠」は英語でLiquidity Trap。金融緩和により金利が低下しても通貨供給量が増えず、景気低迷やデフレが止まらない状態のことで、1946年に亡くなった英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズ氏が指摘した理論。クルーグマン氏は、デフレに対する日本政府や日銀の対応の遅さを激しく批判した。

アベノミクスはクルーグマン氏の指摘を真正面から受け止めた政策と言える。クルーグマン氏は2月5日付けで「The Japan Story」と題するコラムをニューヨーク・タイムズに寄稿。「一時的な財政刺激とインフレ率の上昇のコンビネーションが、アベノミクスでようやく動いた」と評価した。ただ、「ずっと前からやるべきだったが」と指摘した。

フィナンシャル・タイムズも、3月3日付けの社説の中でアベノミクスに関して「15年前にやるべきだった」と主張した。そして「遅すぎるのは悪いが、やらないよりはまし」と結んだ。アベノミクスで狙い通り円安が進み、株式相場は上昇した。一方で、債券市場は一時的に混乱した。

海外で無視から注目に変わったのは良いことだと思う。世界の経済界やインテリ層の間では、日本のインフレ目標を巡る議論が盛んだ。ただ、世界的にも突出した少子高齢と労働人口の減少はアベノミクスで変わるとは思えない。日銀の新旧総裁のどちらが正しいか、判断するのは時期尚早と言える。

[April 12, 2013] No 0105251

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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