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2013/03/26キプロスとロシアの特殊な関係


モスクワに駐在していた1990年代半ば。キプロスへの旅行に誘われたことが何度かあります。ソビエトが崩壊した1991年12月以降、日本人がサイパンやグアムに行くような感覚で、キプロスへ観光に行くロシア人が急増しました。地理的に近い、温暖な気候、キリスト教の宗派が近いことも人気の背景です。モスクワの空港から何便もチャーター便が出ていて、妻の両親は何度も旅行していました。

ロシアの富豪や経済マフィアに関する著書があるミーシャ・グレニー氏は、フィナンシャル・タイムズへの寄稿文で以下のように書いています。

ソビエトが崩壊以降、ロシアから3000億ドル(日本円に換算して約28兆5000億円)の現金や金塊が国外に持ち出された。新生ロシア誕生の最初の10年は混乱期で、元高官やマフィアらがスーツケースなどに入れて国家財産を持ち出した。スイス、ロンドンのシティ、アメリカのウォール街は、それぞれ恩恵を受けた。しかし、最もロシア人の存在が増したのは中東だった。ドバイとイスラエルにロシア人の多くが向かったが、最も人気があったのはキプロスだった。地中海の太陽、タックスヘイブン、非常に甘い警察など、モスクワのエリートが好むものが全てあった。

多くのロシア人観光客に加えて、ロシア人の富豪や経済マフィアはキプロスに多額の預金をしていました。一部はマネーロンダリングの可能性が高いとされています。キプロスは2004年5月にEUに正式加盟、2008年1月からユーロが導入されたことで、その傾向が加速しました。キプロスの銀行の預かり資産の約3分の1はロシア人のものです。その額はキプロスのGDPを超えています。  

キプロスの金融システム危機が表面化した先週、キプロスのサリス財務相が直ぐにモスクワに飛び緊急融資などを求めたのには、こうしたキプロスとロシアの特殊な関係があります。ユーロ圏各国やECBなどがキプロスに厳しい態度をとったのも同じ背景です。

人口80万人の小国キプロスの経済危機は、2大銀行を再編すること、預金保険で保護されない10万ユーロ超の預金者への強制負担でユーロ圏財務相が合意、一旦落ちつきました。大口預金者の負担は40%に達するとの指摘もあります。今回の混乱で金融システムの脆弱さが表面化する形となり、ロシア人の巨大マネーが、安全なスイス、ロンドン、ニューヨークに移る可能性があります。外国の富裕者向け銀行が先週からロシア人に積極的に営業しているそうです。

[MARCH 25, 2013] No 0105237

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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