2分でわかるアメリカ

2013/03/23「常識シリーズ23」世界で一番有名な日本人


 ハリウッド俳優に代表されるセレブのほとんどが住むロサンゼルス。エンターテインメントの都で最もホットなレストランはどこか。もう1つ。世界で最も有名な日本人は誰か。 

2番目の質問の答えは、安倍晋三、鈴木一郎、渡辺謙、小澤征爾、孫正義など、答えが分かれるかもしれない。しかし、安倍首相を知っている人は一部の政治好き、イチローはヨーロッパでは無名だ。世界の主要国で最も知名度が高く、尊敬されている日本人は松久信幸氏ではないか。欧米の政界、財界、セレブ界で松久氏のレストランNOBUを知らないものはいない。

戦後間もない頃、埼玉で生まれた松久氏は高校卒業後に東京・新宿の寿司屋で修行した。知り合った日系ペルー人に誘われ南米に渡った。寿司屋のリマ店を開業したが失敗。その後、米アラスカに渡り自分の店を始めたが火事ですべてを失う。1977年にロサンゼルスに移り、その10年後にビバリーヒルズにMATSUHISAを開業した。直ぐにセレブが通う有名店になる。顧客の一人だった俳優ロバート・デ・ニーロに誘われニューヨークでNOBUを開業したのをきっかけに世界で知られるようになる。

ニューヨークで最も予約が取りにくいレストランになったNOBUは、ミラノ、ロンドン、アテネ、東京、香港、北京、メルボルン、モスクワ、ブダペスト、ドバイに相次いで開業した。米国内のダラス、ラスベガス、サンディエゴ、マイアミ、ホノルルのレストランはどこも大繁盛で予約がなかなか取れない。

 日本食とペルー料理のフュージョンで日本人の間では賛否両論があるが、NOBUは世界で誰もが認めるトップ・レストランだ。去年、リロケーションしたマリブ店は、高級リゾート・ホテルのような演出で、駐車場には、ロールスロイスやベントレーといった超高級車がずらりと並ぶ。ラスべガスの高級ホテル・シーザーズ・ホテル内にNOBU HOTELも今年開業する。セレブシェフで実業家の松久氏の集大成とも言える。 

1970年代から1980年にかけて、日本の自動車と家電が世界を制した。しかし、大衆向け製品であり、マスマーケットを対象にしたもの。フランク・ミュラーの時計、アストン・マーティンといった世界の富豪やセレブが好む超高級製品のメイド・イン・ジャパンはなかった。ソニーが10年ほど前にQualia ブランドで超高級品市場を狙ったが失敗した。日本人がこれまで入れなかった領域に松久氏がいることは間違いない。

[MARCH 22, 2013] No 0105236

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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