2分でわかるアメリカ

2013/01/12「常識シリーズ13」“良い円安と悪い円安”


「日本の常識は世界の非常識」シリーズ第13回。

2012年11月中旬に当時の野田首相が衆院解散を明言してから急速な円安が進んだ。12月16日に実施された選挙で自民党が大勝すると円は一段安になった。安倍新首相は、日銀に無制限の追加緩和を要求、インフレターゲットを1%から2%にすることを迫った。20兆円もの大型公共事業も打ち出した。誰もが円安が続くと予想している。

円安を受け、日本の株式市場が活気づいた。東京株式市場の12月28日の大納会では、日経平均株価指数が年初来高値を更新。2012年1年間で22.9%上昇した計算になる。12月の海外投資家による日本株の買越額は記録的な規模に膨らんだ。

 日経平均株価指数に採用されている225社の7割から8割が輸出型企業で、円安による輸出増が企業業績を押し上げるとの観測が背景にある。日本のエコノミストらが好んで使う「良い円安」と言える。円安に「良い」も「悪い」もないが、日本経済と輸出型企業からみると過度の円高是正は「良い円安」だ。 

高額なレクサスを世界に輸出しているトヨタのマージンは増えるだろう。しかし、ソニーやパナソニックといった日本の家電メーカーは商品力が落ちているため、円安で業績が回復するとは思えない。世界の消費者のトレンドとなる商品を開発しない限り、円安の恩恵を享受することはない。

格付け会社フィッチは、円安メリットより巨額な政府債務に注目し「財政再建に取り組まなければ再び格下げする」と警告した。日本が信用を失ったとき、円はさらに売られると見られる。いずれ「良い円安から悪い円安に変わる。「日本売り」と呼ばれるかもしれない。円安で電気料金やガソリンなどが急騰するリスクもある。

セントルイス地区連銀のブラード総裁は10日、安倍政権の円安政策がインフレを招くと警鐘を鳴らした。ブラード総裁はまた日本の為替政策は近隣窮乏化政策だと批判した。自国通貨を弱くして周辺国の雇用を奪うことをBeggar they neighbor(近隣窮乏化政策)という。

円相場は2012年年初から年末までの1年で12.9%下落した。外国人投資家は、日本の株式相場を円ではなくドルで計算する。円の下落を考慮すると、単純計算で外国人の持ち株は円で計算した22.9%ではなく、10%しか上昇しなかった計算になる。円の下落率(ドルの上昇率)が株式相場の上昇率を上回った場合、外国人が保有する日本株は下がることになる。外国人の投資資金は逃げ足の早い資金であり、「悪い円安」がはじまると直ぐに退場するかもしれない。

[JANUARY 11, 2013] No 0105187

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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