2分でわかるアメリカ

2012/12/22「日本の常識は世界の非常識」11


ジョージWブッシュ政権は、ネットバブル崩壊後の景気悪化を受け、2001年と2003年の2度に渡り大型減税を実施した。コロンビア大学ビジネス・スクールの校長で経済学者のグレン・ハバード氏の案を基にした政策だ。所得税の最高税率が39.6%から35%に引き下げられたほか、配当課税は39.6%から15%に、55%だった遺産相続税は最終的にゼロになった。

 「ブッシュ減税」が2012年12月31日に期限切れとなる。つまり増税になる。一方、年明け1月1日からバジェット・コントロール法により歳出が強制的に削減される。増税と歳出削減が同時に起こると回復の兆しが見えた景気の腰を折る。景気後退に陥るという懸念を「Fiscal Cliff」と呼ぶ。日本語では「財政の崖」。 

11月の選挙後、再選されたオバマ大統領と議会は、「財政の崖」を回避するため交渉を続けている。表面的には、富裕層の増税を巡る見解の違いから交渉が難航しているとされている。実際には、幅広い税制社会保障歳出削減政府債務の上限(シーリング)などが複雑に絡んでいる。大統領と議会指導者は、背後にいる多くのスタッフが政策を練り、交渉で知の対決をしている。

ホワイトハウスと呼ばれる米大統領府には約2000人の職員がいる。シークレット・サービスなども含まれるが、多くは大統領のブレーン的な役割を担っている。財務省などの省庁とは別に、大統領府には、政策開発局、経済諮問委員会や行政管理予算局など多くの機関がある。いずれもオバマ大統領のブレーンであり、シンクタンク的な役割もある。リサーチ、戦略、政策立案を手掛け、大統領をサポートする。

議会のスタッフも充実している。上院が30名、下院で15名ほどの政策担当者が議員の活動を支えている。議会予算局や会計検査局などの補助機関にも100人以上の専門スタッフがいる。一種の調査機関で、シンクタンクでもある。立法機関の連邦議会は、行政機関のホワイトハウスを監視する役割があり、強力なブレーンがそれを支えている。さらに、2大政党制であるため、民主党と共和党は、それぞれ優秀な政策スタッフを抱え、いつでも政権を担うことが出来る状態にある。

日本はどうか。第46回衆院選挙は、過去最悪の選挙だった。政党が乱立、反対するだけの政党も出現した。金融政策、消費税、原発、TPPなどの争点で、各政党の政策はいずれも表面的で説得力がなかった。有権者がかわいそうだし、投票率が低かったのもうなずける。

民主党の野田総理が解散した理由も個人的感情としか思えない。民主党が大敗したことで、2大政党制の未来も怪しい。

日米の政治システムは異なるし、米国の真似をする必要もないが、政党本部や議員事務所には、根回し役はいるが、政策を立案しサポートするスタッフがいなさすぎる。シンクタンク、民間企業、学会との交流もほとんどない。労働市場の流動性が低いため、人材が偏りすぎる。戦争終結から67年。日本の政治はまだ未熟だ。「精神論の対決」ではなく「知の対決」をして欲しい。

24日と25日の出稿はお休みし、26日に再開します。

[DECEMBR 21, 2012] No 0105176

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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