2分でわかるアメリカ

2012/12/15「日本の常識は世界の非常識」10


20年前に赴任したベルギーの首都ブリュッセルで発見があった。ある日、たまたまベルギーの国営テレビを観ていたら「Dデー」の式典を中継していた。CNNもBBCもフランスのTF1も同じ映像を流していた。

EU本部やNATO本部など多くの国際機関があるブリュッセルには、ベルギー人のほか、多くのアメリカ人やイギリス人、フランス人らが住むが、彼らにとっての第2次世界大戦は、「Dデーに象徴されるナチス・ドイツとの戦いだった。英語で「D-Day」、フランス語で「Jour-J」と呼ばれる6月6日は、ドーバー海峡を渡って連合軍がノルマンディーに上陸した記念日だ。

 その後に赴任したモスクワでは、5月9日の「ジェン・パヴェダ」は大きな祝日だった。日本語で「勝利の日」。1945年に連合軍がドイツを降伏させた記念日だ。さらに10年前に赴任したニューヨークでは、第二次世界大戦と言えば、Dデーのほか、米国本土が史上初めて攻撃された12月7日の真珠湾攻撃を連想する人ばかりだった。 

日本で生まれ育った人であれば、「戦争」と言えば、まず8月15日をイメージする。日本人はこれを「終戦の日」と呼ぶが、米国、英国、フランス、カナダ、そしてロシアでは、9月2日を「対日戦勝記念日」としている。英語では「V-J Day」。トルーマン米大統領がポツダム宣言を調印した日だ。

さらに、原爆の日は日本人にとって特別な日だが、原爆を投下した米国では、8月6日は何の日か知らない人が意外に多い。第二次世界大戦を巡る欧米と日本の感覚の違いはあまりにも大きい。アジアの歴史観も日本人とはかなり異なる。多くのアジアの人は、第2次世界大戦は「日本人の侵略」をイメージし、8月15日は「日本が降伏した日」としている。

日中間の緊張が高まっている尖閣諸島問題に関し、中国は、領有権の所有は米英中の首脳が対日戦略を決めた1943年のカイロ宣言が根拠だとしている。一方、日本の外務省のサイトでは「領有権の取得は第二次世界大戦とは何ら関係がない」と、双方の見解には大きな隔たりがある。解決の方向が全く見えない。

現地で暮らさないとわからないことがあまりにも多い。筆者は米国に10年以上住んでいるが、いまだに発見が少なくない。外交だけでなく、外国との貿易や取引などでも、相手の立場や慣習を理解しないと想定外の結果を招くことがある。相手の歴史観や社会的背景、主張の根拠を理解することは重要だ。その上で主張を通すための戦略を立てないと物事が進まないのではないか。

[DECEMBR 14, 2012] No 0105171

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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