2分でわかるアメリカ

2012/12/01「日本の常識は世界の非常識」8


日本を代表する企業はどこか。多くの日本人がソニーやパナソニックなど家電メーカーを連想する。それでは米国を代表する企業はどうか。アップル、グーグル、そしてフェイスブック。

日本を代表する企業は古い企業ばかり。2012年11月末時点の企業の価格を示す時価総額は、ソニーが約8000億円、パナソニックが約9800億円。

一方、アメリカを代表するアップルの時価総額は日本円に換算して約46兆円。ソニーの57倍もある。グーグルは約19兆円で日本のトヨタより大幅に高い。フェイスブックは約5兆8000億円で、日本を代表するベンチャー企業グリーの約17倍。

 この違いは何か。成長性の違い以外に、背景の1つとして日本の「大企業病」がある。日本人は有名校にいき、大企業に就職することを目指す。そして同じ会社で一生を過ごす。制度や規制も大企業に優しい。政治家も役人もメディアも学校も大企業の方ばかり向いている。 

米国は対照的だ。ハーバードやスタンフォードなどの優秀な学生の多くは「起業家」を目指す。政府はベンチャー企業の育成を重視。税制はベンチャー企業に有利。大統領が起業家と会食、また外国の要人をシリコンバレーに招くこともある。それほど大事にしている。

企業の創業にシードマネーを入れるエンジェル、そして増資などを引き受けるベンチャー・キャピタルなどリスクマネーの日米格差も大きい。米国のベンチャー・キャピタルによるファンディングの規模は世界の中で突出している。ロシアを含めた欧州、中東、インド、そして中国など世界中のマネーが米国の投資先を探している。大手会計事務所アーンスト&ヤングが去年まとめた「世界のベンチャー・キャピタル」の投資先リストには日本が入っていない。日本については「エンジェルはいないし、ベンチャー投資の機会が少ない」とする伊藤忠テクノロジー・ベンチャーズの安達社長のインタビューが掲載されているだけだ。

シリコンバレーを拠点にするネットイヤーの石黒不二代社長は、「グーグル、日本に育たず」と題する日経産業新聞への寄稿文の中で、グーグルが上場前に集めた資金は約800億円、フェイスブックは約1800億円、資金調達力が日本のベンチャー企業のアキレス腱だと指摘している。

2006年の「ライブドア・ショック」の後遺症もある。20年相場が上がっていない日本の株式市場は流動性が低下、株式公開するベンチャー企業の数は極端に少ない。銀行融資も中小には厳しく、ベンチャー企業は成長のための資金調達手段がない。優れたアイデアやテクノロジーがあっても活かされない可能性がある。

古い大企業ではなく、ベンチャー企業を社会全体で育成することが日本再生の鍵の1つかもしれない。

[NOVEMBER 30, 2012] No 0105161

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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