2分でわかるアメリカ

2012/11/10「日本の常識は世界の非常識」5


 「就職氷河期」などと大学生の就職が厳しさを増していることが日本のメディアで頻繁に取り上げられる。毎年4月には入学式と並んで、入社式が話題になる。企業は人事部が新卒を一括採用し、入社した正社員は終身雇用・年功序列の線路に乗る。誰もが知っている雇用の仕組み、実は日本だけの特殊な慣行だ。 

元NHKでアゴラ研究所を主宰している池田信夫氏は、ニューズウィーク日本版への寄稿文の中で、新卒一括採用を「日本だけの奇妙な雇用慣行」「古い雇用慣行」だと指摘している。韓国だけが日本に似た雇用慣行があったが、アジア危機以降になくなったとしている。

大企業に勤める知人は部長職ながら部下がいない。別の知人は給与だけは役員級だが仕事らしい仕事をほとんどしていない。日本経済が成長した1980年代までは売上が右肩上がりだったから、年長者に新しいポストをつくり、仕事がないベテラン社員に高給を払えた。成長期から成熟期に移った日本の大企業は、ベテラン社員の負担が重くのしかかる。固定費が膨らみ新卒が雇えない。

欧米をはじめとする日本以外の国は、学生時代にインターンとして仕事を経験する。新卒は「見習い」のような形で仕事をはじめる。採用は基本的に経験者のみ。人事ではなく部署の上長が採用を決める。空いたポストに専門家を面接で決める。人事は手続きするだけ。入社する時期はバラバラで、入社式はもちろんない。終身雇用・年功序列ではないので、高い報酬を目指して転職を繰り返す人が少なくない。日本のパズルのような人事配置はありえない。

欧米の労働市場には流動性がある。政・官・民・アカデミック界で人材が移動する。日本型雇用では労働市場が膠着する。

経営の神様とされた故ピーター・ドラッカー氏は「企業の寿命は30年」と明言した。事業ドメインを時代に合わせて変えないと衰退するとの警鐘だ。日本に当てはめれば30歳を超えた企業は雇用制度を見直す時がきたと言えるかもしれない。新卒一括採用、終身雇用という極めて高い経営リスクを取っている日本企業は、いま変わらないと成熟期を通り超えて衰退期に入ってしまう。

[NOVEMBER 09, 2012] No 0105147

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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