2分でわかるアメリカ

2012/11/09「財政の崖」の恐怖


 注目されたアメリカの選挙は「何も変わらない」結果になりました。行政のトップは民主党のオバマ大統領。立法の機関の議会は、共和党が下院の過半数、民主党が上院の過半数という「ねじれ」の選挙前と全く同じ構図が続くことになったからです。 

ワシントンとウォール街、そしてビジネス界の関心は「財政の崖」に移りました。英語ではFiscal Cliff(フィスカル・クリフ)といいます。いったい財政の崖とはなにか。

一言でいうと、増税と歳入削減(つまり政府が使う予算を減らすこと)が同時にはじまることで景気が後退するリスクです。

具体的にはまず、ブッシュ政権時代に導入された幅広い減税措置、いわゆる「ブッシュ減税」は今年12月31日で期限が切れます。所得税は2001年前の高い水準に引き上げられます。額にして計2950億ドル。可処分所得が減るので消費が萎縮します。さらに従業員に支払った給与の額に応じて会社に課せられる給与税(Payroll)の減税も失効します。また、会社側には、「オバマケア」と呼ばれる医療保険改革で負担が増えるため、投資と雇用を控えることになります。

さらに、投資の利益分に対するキャピタル・ゲイン税、株式配当などに対する配当税なども増税になります。年内に利益を確定する株式などの売りが膨らむ可能性があります。増税総額は5320億ドルに達する見通しです。

財政の崖のもうひとつの要素は歳入削減です。防衛費をはじめとする政府予算が大幅カットされます。失業保険などの社会福祉予算も削減されます。削減額は1360億ドル。アメリカのGDPの0.8%を押し下げることになります。

「財政の崖」は景気後退だけではなく、政治機能のマヒを招くという指摘もあります。

残された時間は2カ月を切りました。オバマ大統領と議会、特に共和党のベイナー下院議長が法律の修正、もしくは新たな措置の導入などで合意しない限り、「財政の崖」の恐怖がマーケットを混乱させ、企業が投資を控え、消費者心理を悪化させることになります。

[NOVEMBER 08, 2012] No 0105146

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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