2分でわかるアメリカ

2012/10/27「日本の常識は世界の非常識」3


1997年11月24日。月曜日だが振替休日だった。早朝6時から開かれた山一證券の臨時取締役会で「自主廃業」が決議された。日経新聞が22日未明に電子端末QUICKで速報したため、マスコミ各社は「Xデー」の準備で忙しかった。テレビ東京経済部に所属し「ワールド・ビジネス・サテライト」でマーケットを担当していた僕は早朝から出社していた。

東京証券取引所で記者会見した当時の野澤正平社長は「社員は悪くありませんから」と涙ながらの大声をあげた。中継で流れてきた映像はいまだに記憶にあたらしい。

日本人は、野澤社長を「社員を思う悲劇の経営者」としてとらえた。しかし、欧米人の目には株主の期待を裏切った弱い経営者に映った。

日本の経営者は「社員を食わせなくてはならない」としきりに言う。会社は社員のもので、社員と家族が生活していければいい、と発想する。成長のための新しいことはやらない。株主は頻繁に犠牲になる。

1989年12月にピークをつけた日本の株価は20年経っても3分の1の水準でしかない。株価が上がらないから投資家が離れる。東京証券取引所のいまの売買高は、2008年の金融危機、いわゆるリーマン・ショック前の半分以下でしかない。海外投資家は日本を離れ、欧米市場や他のアジア市場に資金を移したことも影響している。

一方、欧米では、「会社は株主のもの」という考えが徹底されている。経営者は株価を上げるため、売上を最大限上げると同時に経費を最大限削る。経費をカットするため、社員が頻繁に解雇される。時価総額を上げられない場合は経営者が解任される。

景気の減速が長期化する中、米国企業の多くは過去最高水準の利益を上げている。高成長のIT企業だけでなく、鉄鋼や小売といったオールド・エコノミーの会社も同様だ。これに対し、日本の大手企業は赤字、もしくは利益がほとんど出ていない。






  社員のための経営と株主のための経営。どちらがいいかは別として、前者の日本の経営が通用しなくなっていることは明らかだ。山一證券の廃業はそのはじまりだった。 

[October 26 2012] No 0105138

※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

NOTE

このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。

Market Editors
【データ提供】

PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

バックナンバー

  • 2018.12.08 更新2019年のFRB、世界経済、投資マーケットの2018年のテーマは、堅調なアメリカ経済、利上げを継続するFRB、トランプ政権の保護主義的な政策でした。トランプ大統領やFRBのパウエル議長の発言で…
  • 2018.12.07 更新NY株安、ミステリーで始まったニューヨーク株式市場は5日、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領の国葬のため休場でした。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)では、アメリカ東部時間の5日午後6時…
  • 2018.12.06 更新第41代アメリカ大統領ジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュ第41代アメリカ大統領の葬儀が5日、ワシントンで営まれました。国葬は2007年のジェラルド・フォード第38代大統領の葬…
  • 2018.12.05 更新逆イールド、景気後退の恐怖通常、償還期間が短い債券の利回りは、期間が長い債券の利回りより低い。例えば、2年債の利回りは10年債利回りより低い。ただし、逆転することがあります。金融業界で「…
  • 2018.12.04 更新米政府閉鎖めぐる駆け引きアメリカ連邦政府の2019年会計年度(18年10月〜19年9月)の正規予算はまだ成立していません。今週金曜日7日までに合意しなければ、政府機関の一部が閉鎖される…

「日刊2分でわかるアメリカ(2分でアメリカがわかる)」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ