2分でわかるアメリカ

2012/09/15雲隠れした「あの映画」の制作者


リビア東部にあるアメリカ領事館でスティーブンス大使がロケット砲による襲撃を受け死亡、一緒にいたアメリカ人の領事館職員も死亡しました。

きっかけとなったのは、アメリカで制作された映画「Innocence of Muslims」です。イスラム教の預言者ムハンマドを冒涜(ぼうとく)したことで強い反発を招きました。リビアだけでなく、エジプトやイエメンのアメリカ大使館周辺でもアメリカの星条旗が切り裂かれるなどの暴動が発生。さらにスーダンではアメリカの同盟国であるイギリスとドイツの大使館が襲撃されました。反アメリカの動きは中東全体や北アフリカで深刻化しています。

問題の映画を制作したのは、カリフォルニアに住むサム・バシル氏です。自称イスラエルのユダヤ人で、不動産開発が本業、映画の脚本や監督も手がけています。エジプトに家族がいるという報道もあります。

場所を特定しないことを条件にAPのインタビューに答えたバシル氏は、「イスラム教徒はガンに侵されている」とする政治的なメッセージを映画で伝えたかったと語っています。100人のユダヤ人から500万ドルの寄付を集め制作しました。

 映画はYouTubeなどで、全編もしくは一部をみることが出来ます。2時間あまりの作品で台詞は全て英語ですが、お世辞にも完成度が高いとは言えません。エジプトのカイロを舞台に預言者ムハンマドやイスラム教徒を面白おかしく描いています。 

同様にイスラムを批判したオランダ人の映画監督テオ・ファン・ゴッホ氏が暗殺される事件が2004年に起きました。バシル氏が制作した「Innocence of Muslims」が3週間ほど前にロサンゼルスで上映された際は騒ぎになりませんでしたが、中東各国の激しい反応を受け、バシル氏は身の危険を感じ雲隠れしました。映画に関わった15人も息を潜めて暮らしているそうです。

「アラブの春」を演出したアメリカの外交努力が全て吹っ飛びそうな様相です。この問題、一段と深刻化する可能性があります。

[SEPTEMBER 14, 2012] No 0105108

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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