2分でわかるアメリカ

2012/09/06100歳の会社員


ちょっと古い話ですが、20年ほど前にブラジルのリオデジャネイロのホテルで衝撃を受けたことがあります。小学生ぐらいの子どもが働いていたからです。年齢はたぶん10歳前後。ホテルのエレベーターボーイとして普通に働いていました。現地の人に聞いたところ「珍しくない」と話していました。

ブラジルとは対照的にアメリカでは高齢者の多くが現役で働いています。アメリカでは定年退職という概念が薄く、法律でも「年齢を理由に採用や業務で差別をしてはならない」とされています。自由の国アメリカでは、人種や宗教、性別のほかに年齢でも差別してはいけないのです。日本の新聞を読むと、容疑者から芸能人まで名前のすぐ後に年齢を表記するのが「当たり前」になっていますが、アメリカからみると「差別的」に映ります。

ということでアメリカでは、60歳どころか70歳を超えても、80歳を超えても「社員」として働いている人が少なくありません。ロサンゼルスにあるオフィス用具などを扱うコンテナ・ショップには80歳以上とみられる女性がキャッシャーをしています。クリスチャン・サイエンス・モニターによりますと、ボストン郊外にある注射器工場の43人いる社員の平均年齢は73歳、最高齢の社員は100歳だそうです。

アメリカ労働省の最新のデータによりますと、65歳以上のアメリカ人の5人に1人は現役で働いている、もしくは求職中です。この数字は過去50年間で最高です。  

高齢者が仕事を辞めないとどうなるか。両面あります。65歳を超えても一定の収入がある「会社員」には、公的年金や医療補助の一部または全部が適用されないため福祉財政の負担が軽くなります。その反面、若い層の職を奪っている可能性があります。アメリカ全体の失業率は8.3%。特に若い層の失業率の高さが目立つ背景の1つかもしれません。

アメリカのGDPの7割以上は個人消費です。積極的に消費するのは若い層。最新のモバイル機器やコンテンツを旺盛に消費します。その一方で、高齢者は消費に消極というか、お金を遣いません。「永久会社員」が景気減速の背景にあるとの指摘もあります。高齢者が自由に働ける社会は素晴らしいのですが。

[SEPTEMBER 05, 2012] No 0105101

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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