2分でわかるアメリカ

2012/05/26住宅の次のバブル


アメリカ経済は、2007年から2008年にかけて崩壊した住宅バブルの後遺症からいまだ立ち直れないでいます。住宅価格は下落基調にあり、差し押さえも増えることはあっても減ることはありません。

こうした中、アメリカ連邦政府が保証した学生ローンがバブル化しています。FRBが公表した2011年末時点の学生ローン残高は8670億ドルに達しました。クレジットカードのローンや自動車ローンより多い額です。2007年からの増加率はなんと368%で、まさにバブルです。  

教育専門家のまとめでは、大学での教育費などを払うために借りたローンを返した人は全体の3分の2、残りの3分の1は平均2万ドルから2万5000ドルのローン残高があります。学生ローンが残っている人の10%は5万ドル以上の借金を抱えています。学費が高騰していることも背景にあります。

住宅ローンや自動車ローンなどの多くは民間の金融機関からの借金で、住宅ローン・バブルが崩壊した際は銀行の債権の多くが焦げつき、金融危機のきっかけになりました。これに対し、「いまの」学生ローンのほとんどは政府が保証し、政府系の金融機関から借りています。つまり、学生ローン・バブルが崩壊しても金融システム・リスクが低いと言えます。アメリカ政府の財政赤字が深刻ですので、問題になる可能性がありますが、いまの水準だとまだ大丈夫です。

ただ、学生ローンを借りている方は大丈夫ではありません。雇用不況で卒業後に仕事が見つからない若者が多く、当然ローンを払えない人が多くいます。住宅ローンなどの多くは、住宅を手放したり、自己破産すれば免除されますが、政府系金融機関から借りた学生ローンは破産しても免除されません。完済するまで一生ついてまわるのです。

経済の活力は若い層による消費力です。学生ローンが重石になり、若い層が消費を控えると景気に悪い影響を与えます。住宅ローン・バブルの後遺症を抱えたアメリカ経済に、新たな問題が発展する可能性があります。

[May 25, 2012] No 0105031

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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