2分でわかるアメリカ

2012/05/01アップル流「税金を払わない法」


ロサンゼルスの友人の1人がラスベガス近郊に家を買いました。

友人は、今年の9月に新居に引っ越す予定です。住宅バブル崩壊の影響を最も大きく受けた地域であるため、家の値段がピーク時の3分の1ほどというのも家購入のきっかけの1つだったのですが、もう1つ大きな理由があります。ハリウッドで成功した友人は、彼の個人事業会社に対するカリフォルニア州の8.84%の法人税を避けるため引っ越しを決めたのです。ラスベガスがあるネバダ州の法人税はゼロです。

彼はまだ現役ですが、iPhoneとiPad、それにインターネットの環境さえあれば、何処にいても仕事ができるという時代の変化も引っ越しの背景です。

友人の計画している「節税」を、世界規模で実践している大企業があります。アップルです。週末のニューヨーク・タイムズは、アメリカで最も稼いでいる企業であるアップルの「税金対策」を詳しく報じました。

 それによりますと、本社があるカリフォルニア州キュープチーノから東へ約300キロ離れたネバダ州のリノにアップルの小さな事務所があり、少数精鋭の専門部隊が、カリフォルニア州と拠点がある全米20の州でいかに税金を節約するかの戦略を考えています。リノはミニ・ラスベガスと呼ばれるカジノで有名な地方都市ですが、アップルがオフィスを構えていることは知られていません。 

アップルはこのほか、アイルランド、オランダ、ルクセンブルク、そしてブリティッシュ・バージン・アイランドにも税金対策のための拠点があります。タックスヘイブンもしくは税率が低いことで有名な国や地域に拠点を設けることをDouble Irish with a Dutch Sandwich(オランダ風サンドイッチ付ダブル・アイリッシュ)と呼ぶそうです。アイルランドに2カ所、オランダに1カ所の拠点を設け、知的所有権などをやり取りする方法から名付けられたものです。

アップルはiPhoneやiPad、マックなどのハードウェア以外に、iTuneなどで音楽や映画、ゲームを販売しています。ハードウェアと違い、デジタル配信の拠点は世界の何処にあってもいいため、税金の低い国や地域の拠点の売上に計上、もしくは拠点を経由して税金を最小化しているのです。アップルの今年度の利益は日本円で約4兆円に達する見通しですが、税金を低く抑えるため現金がどんどん増えていくことになります。

アップルの税金対策は、オールド・エコノミーに対応した税金の仕組みをうまく利用したもので、シリコンバレーの企業の多くも同様の対策をしています。知的財産で利益を出す企業と、自動車や家電、店舗型小売などオールド・エコノミー企業との税引後の利益の差が一段と拡大しそうです。

[April 30, 2012] No 0105012

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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