2分でわかるアメリカ

2012/04/24大統領は知っていた


かつては、スパイ小説といえばモスクワが舞台でした。ソビエトが崩壊すると、次はバクダッド舞台のスパイ小説が増えました。ハリウッドの映画もそうでした。旧ソビエトも中東も「不透明」、つまり、よくわからないため読者などの想像力を大いにかき立てました。冷戦が終わり、サダム・フセインとビン・ラディンが他界したいま、舞台はアジアに移りました。中国です。

中国共産党の幹部候補で、重慶市のカリスマ的な市長だった簿熙来氏と妻をめぐる政治スキャンダルについて、欧米メディアはスパイ小説のように連日報じています。

これまでに明らかになった主な事実関係は以下の通りです。

- 市警察トップの王立軍氏がアメリカ領事館に駆け込む(2月)

- 習近平副主席がアメリカ公式訪問(2月) - 簿熙来氏が市長から解任される(3月)

- 簿熙来氏が中国共産党の中央政治局員から解任される(4月)

- イギリス人実業家殺害容疑で簿熙来氏と妻を本格捜査(4月)

 時系列でみると、簿熙来氏をめぐる一連のスキャンダルに微妙にアメリカが絡んでいます。もちろん、中国共産党内部の争いに直接絡んでいるわけではありません。アメリカの外交が簿熙来氏の行方に影響したということです。 

週末のウォール・ストリート・ジャーナルは、今年2月6日に王立軍氏がアメリカ総領事館に駆け込んだ事件について、オバマ大統領が、事態の進展中か、事態の収拾直後という早い段階で報告を受けていたとのスクープを報じました。

王立軍氏は結局、30時間後に米大使館を出たのですが、もしオバマ大統領主導で王立軍氏の政治亡命を認めていたら状況が大きく変わっていた可能性があります。王立軍氏は簿熙来氏の側近であり、市の警察と公安のトップでしたので、亡命していたら過去に例がない中国内部の情報が入手できていた可能性があります。また、事件から約1週間後に習近平副主席がオバマ大統領と会談していますので、アメリカ側は「強力な」外交カードを持つことになっていました。

中国の現体制が成立して以来最大の政治スキャンダルがどう進展するかはわかりません。しかし、オバマ大統領もしくはアメリカ政府が、今年2月の判断を後悔することになるかもしれません。個人的には、ワシントン・北京、そして重慶を舞台にしたスパイ小説を将来、読んでみたいです。

[April 23, 2012] No 0105007

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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