2分でわかるアメリカ

2012/03/27一転して悪夢に


IPO、新規株式公開は、起業家の成長への大きなステップであり、夢の1つです。会社を興して7年目にIPOを果たした会社が一瞬にして危機的な状況に陥りました。

BATS GLOBAL MARKETS(バッツ・グローバル・マーケッツ)は、電子取引専門の取引所です。1秒間に株式を何度も売買できる高速取引が「売り」で、売買手数料も格安です。ヘッジファンドなど大口の法人顧客を順調に獲得し、アメリカの株式取引の約11%の取引を扱うまでに成長しました。ニューヨーク証券取引所とナスダックに次ぐ第3の取引所です。

BATSは自らの取引所で先週金曜日23日にIPOしました。公開価格は1株16ドル。午前10時45分に15ドル25セントで初値がついたのですが、その後直ぐにシステムがダウン、取引が中断しました。

それから12分後の午前10時57分。BATS取引所でアップルの株が542ドル80セントをつけました。前日の終値から9.4%低い急落で、ウォール街全体に緊張が走りました。世界を代表する銘柄の急落を受け、アップル株の取引は一時中断されました。直ぐにシステム障害の影響と判明、5分後の午前11時2分にアップル株の取引は再開されました。アップルの株価は前日終値から小幅安い水準でした。

その後、いくつかの混乱がありましたが、最終的に午後3時42分にBATSはIPOを取り下げる発表をしました。電子取引のシステム会社がシステム障害で自らの首を絞めた格好で、BATSの株主、経営者にとっては最悪の1日でした。BATS は、1億ドル(約82億円)をIPOにより調達する計画でした。

 アメリカの株式取引の歴史で、初値がついた後にIPOを取り下げたのは3度目です。1983年にイーグル・コンピュータという会社の社長がIPO当日に自動車事故で死亡した際、2度目は2007年に訴訟に絡みIPOがキャンセルされたことがあります。 

2年前、高速取引により株価が急落する事件がありました。S&P500指数が15分間で7%も下げました。FLASH CLASH(フラッシュ・クラッシュ)と呼ばれています。今回のシステム障害やIPO取り下げによる影響は限定的とみられますが、コンピュータを駆使した高速取引がいかに不完全かいかに安定していないかが表面化しました。

[March 26, 2012] No 0104988

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

NOTE

このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。

Market Editors
【データ提供】

PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

バックナンバー

  • 2018.06.19 更新増える米資産バブル論※今週の相場がまるわかり『Weekly投資戦略ガイド』(18日更新)はこちらウォール街関係者は「バブル」という言葉を使うことを可能なかぎり避けています。誰も使い…
  • 2018.06.16 更新ナパワインがメニューから消えたアメリカのトランプ政権の通商政策に世界が動揺しました。トランプ大統領は15日の声明で、技術と知的財産が中国に盗まれることを容認できないとして、中国からの輸入品5…
  • 2018.06.15 更新「カリフォルニア州を3分割」投票へアメリカ西海岸の大部分を占めるカリフォルニア州は、幅広い意味で全米最大の州です。人口は4000万人。アメリカ商務省の最新のデータでは、経済は2兆7470億米ドル…
  • 2018.06.14 更新歴史的会談めぐる認識ギャップトランプ大統領は13日、金正恩朝鮮労働党委員長と会談したシンガポールから帰国しました。エアフォースワンがワシントン郊外のアンドリューズ空軍基地に着陸した直後、北…
  • 2018.06.13 更新米エコノミストのシナリオ、2020年景気後退経済指標でみるアメリカ経済は絶好調。失業率は18年ぶりの低水準に低下、賃金の伸びは年末までに3%に達する見込み。2018年のGDP成長率は3%近いとの予想がみら…

「日刊2分でわかるアメリカ(2分でアメリカがわかる)」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ