2分でわかるアメリカ

2012/02/16中国人にラブコール


日本のニュース番組を観ていると、東京のデパートや大型家電小売店、さらには地方の商店街が、中国の観光客に買い物をしてもらう努力をしているシーンがときどき紹介されます。


安全保障を巡る見解の相違、人民元の切り上げを巡る摩擦など、世界ナンバーワンのアメリカとナンバーツーの中国との「いがみ合い」が伝えられています。しかし、中国人の観光客は別です。日本と同様に、アメリカの旅行業界や小売業界は、「世界で最もお金をつかう観光客」に熱いラブコールを送っています。  

アメリカ商務省のまとめでは、2011年の1月から10月までの10カ月でアメリカを訪れた中国人は94万人、前年の同じ期間と比べ39%増えました。裕福な実業家と団体観光客がほとんどです。少し古い統計なのですが、2010年にニューヨークを訪問した中国人観光客が使ったお金は、一人あたり3197ドルです。これは、「海外でお金を使うことで有名な」日本人の消費額とほぼ同じ、今年はさらに増えるとみられています。

ニューヨーク郊外やワシントンDC郊外、西海岸ではロサンゼルス郊外やラスベガスにあるアウトレットモールは、中国人の団体客で連日混み合っています。特にコーチやケイト・スペードなどの混み具合は「異常」といっていいほどです。また、中国にはまだ正式に輸入されていないアバクロンビー・フィッチでは、中国人が大量に買いあさっている光景を良く目にします。

ロサンゼルスのビバリーヒルズのロデオ・ドライブにある高級ブティックの多くは、日本人店員に替わり中国人または中国語を話す店員を雇いました。ヒルトン、シェラトン、そしてマリオットといったアメリカのホテルチェーンは、主要都市にあるホテルに中国人向けサービスの提供を始めました。ラスベガスの高級ホテル、ベラージオでは、ルーム内のテレビは中国語放送のチャンネルがいくつもありました。

中国人の観光客が増えた背景には、オバマ大統領が中国人の入国査証(ビザ)の発行条件を緩めたことがあります。アメリカより先に条件を緩和したEUも、「中国人の買い物客であふれる」という状況が起きています。

景気の改善を示す経済データが相次いで発表されていますが、アメリカ経済はまだ本格回復には至っていません。このため、中国人観光客へのラブコールは今後もさらに続きそうです。それにしても、アメリカ・ブランドのコーチやアバクロはいずれも中国製。「中国からアメリカが輸入したものを中国人が買う」というのは、いろいろ考えさせられます。

[February 15, 2012] No 0104961

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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