2分でわかるアメリカ

2011/10/22ノーベル経済学賞と欧州債務危機


今年のノーベル経済学賞の受賞者に、中央銀行の経済政策が実体経済に及ぼす影響を分析したアメリカ人の2人の経済学者が選ばれました。ニューヨーク大学のトーマス・サージェント教授とプリンストン大学のクリストファー・シムズ教授です。

サージェント教授は、中央銀行が景気を良くしようとお札を刷る政策、つまり量的緩和策を採用しても市民や企業が将来はインフレになると予想するため物価が上がってしまい政策の効果が薄れてしまうという理論で知られています。中央銀行だけでは景気浮揚に限界があり、財政政策との連動が必要だと主張しています。

シムズ教授は、膨大なデータから統計的な関係を見つける研究で知られています。特に、ファンダメンタルズ・ショックと呼ばれる効果の研究が有名です。例えば、政策金利の引き上げは景気に悪影響があるものの、消費者物価が上昇するのは1年半後であると教授は分析しています。

2人の研究は、FRBや日銀をはじめ世界の金融政策に大きな影響を与えたとされています。しかし皮肉にも、いま世界で起こっている金融危機に、2人の研究が活かされているとは思えないことが多くあります。

例えばアメリカ。FRBが追加的な金融緩和策を決める一方で、与野党対立から議会がこう着状態となり、財政政策が行き詰まりかけました。財政健全化策は、まだ方向が固まっていません。

ユーロ圏の債務危機は、サージェント教授の指摘が的中しています。金融政策はECB、財政は加盟17カ国の財務省がバラバラに決めているため、問題発生から2年経っても、最終的な解決に至っていません。

シムズ教授は受賞後のインタビューの中で、「現在の混沌たる状況の解決には必要な研究と指摘しましたしかし教授は70年代に取り組んだモデルは金融危機の特効薬ではない」と同時に語りました。

EU首脳会議が23日と26日に2回にわたって開催され、ユーロ圏の債務危機は大きなヤマ場を迎えます。結果がどうなろうと、いま起こっていることは、世界のエコノミストの将来の研究材料になりそうです。

[October 21, 2011] No 0104880 
 

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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