2分でわかるアメリカ

2011/09/30米の雇用が増えない訳


アメリカで、いま最も深刻なのは雇用です。失業中の人は当然ですが、会社勤めの人も「いつレイオフされるか」ビクビクしながら働いています。あまりにも先行きが不透明なため、景気が良くなる訳がありません。今週発表されたデータは、経営者が雇用に慎重になる訳を説明しています。

医療保険会社傘下の調査会社であるカイザー・ファンデーションズの報告書によりますと、家族がいる社員一人当たりの医療保険代が1万5073ドル(約115万円)に達しました。去年と比べると9%も上昇した計算です。ニューヨーク州では2桁の上昇になる見通しです。

保険代が上がった理由ははっきりしません。医療費が高くなったからとか、26歳までの扶養家族を含めるようルールが変わったからなどと保険会社は説明しています。しかし、景気が悪いため医者にかかる人や健康診断を受ける人が大幅に減ったという別のデータもあり、保険会社の負担が減っている可能性があります。

それでも保険代を上げるのは、2014年から導入される予定の医療保険制度改革法があります。つまり、法律施行前に駆け込みで値上げしているのではないかとの見方があるのです。本当だったら、酷い話です。オバマ大統領は国民皆保険を目指して法律を成立させたのですが、結果として保険代が上がったことで雇用が改善せずオバマ大統領が批判されるという皮肉な結果になっています。

もう1つの保険、失業保険も上がっています。失業率が9%台に高止まりしていて、州政府が管轄している保険の財源が底をついています。それでも失業者の支援が必要ですので、州政府は借金をして保険を払い続けます。借金の返済の一部や金利は最終的に会社が負担することになります。つまり、会社が負担する失業保険代も上がっているのです。

医療保険も失業保険も会社負担が急激に高くなっているため、当然会社側は新規の雇用に慎重になります。アメリカが「負のスパイラル」に入っている感じがします。

[September 29, 2011] No 0104864 
 

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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