2分でわかるアメリカ

2011/08/30無制限にお金をつかえる人々


フレンチやイタリアンのちょっと気取ったレストランに出かけた際、ワインをどうやって選びますか。僕は上から順番にみていきます。つまり、値段が安い順にみていきます。その逆、つまり値段が高い方から選んで行く人がいます。

妻と娘が夏休みを過ごしたのはイタリアのトスカーナ地方のフォルテ・デイ・マルミ。斜塔で知られるピサからクルマで30分ほど西側にある高級リゾート地です。人口8000人ほどの小さな街なのですが、夏には観光客が押し寄せ人口が3倍以上に膨れ上がります。フローレンスやミラノに住む裕福なイタリア人が長い夏休みをヨットなどで過ごすことで知られています。  

しかし、隣のギリシャで始まったユーロ圏の債務危機でイタリアの景気も悪化、フォルテ・デイ・マルミを訪れるイタリア人が激減しているようです。イタリア人に替わって、この高級リゾートで夏を過ごしているのはロシア人です。

妻と娘が滞在したプラスティーニン家は日本円で月1000万円の家賃の豪邸を3年間借りています。メイドが2人、2歳の長男の言葉を指導するセラピスト、そして中国から家庭教師を呼び寄せました。中国人を呼んだのは、中国が世界をリードする大国になったため子どもに中国語を学ばせたいとの願いからです。ベッドルームが10あり50メートル級のプールがあります。

近くに滞在しているのは全員ロシア人。しかもルブリフススカヤというモスクワの高級住宅街に住むご近所さん。共通しているのは資産が100億円以上あり、金利がつくためいくら使っても資産が減らない人たちです。毎日、ヨットでランチを誘い合っています。プラスティーニン家は今年大型の高級ヨットを買ったのですが、イギリス人の船長はモナコやカンヌなど好きなところに何処でも連れていってくれますし、スイスで最も権威がある料理学校を卒業したシェフが最高の料理を作ってくれます。シャンパンはドン・ペリニヨンかクリスタルしかなかったそうです。

フォルテ・デイ・マルミの地元の人の多くは毎年夏の1カ月間に1年分の生活費を稼げるため、後は遊んで暮らしているそうです。ロシア人が信じられない額のチップを落としていくからです。街では、イタリア語に次いでロシア語がもっとも大事な言語です。

 友人のご主人、セルゲイはワイン好きで、ミラノやモナコのレストランから携帯のメッセージでどのワインを選んだら良いか相談が来ました。いずれもワインメニューの最も下にある10万円以上のワインばかり。世界的に景気が悪い中、全く別の世界もあるのです。 

[August 29, 2011] No 0104841

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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