2分でわかるアメリカ

2011/08/20過去を否定するハイテク巨人は日本の未来?


パソコン世界最大手のHP、ヒューレット・パッカードがパソコン事業を分離または売却する方針を固め、業界だけではなくウォール街をも驚かせました。

HPはカーラ・フィオリーナCEO(当時)時代の2002年に旧コンパックを吸収合併、PCで世界首位に躍り出ました。現在も世界の20%以上のシェアを持ち、HPの事業部門で最大の売り上げがあります。

さらにHPはマーク・ハードCEO(当時)時代に交渉を開始し、ハード氏が女性問題で退任した直後の去年4月に携帯端末メーカーのパームを買収しました。これをベースに携帯電話やタブレット型コンピュータを開発・販売したのですが、これらは製造を停止、市場から撤退する方針だそうです。タブレットは市場に参入してまだ1年も経っていません。

レオ・アポテカーCEOは就任してまだ10カ月で前の2人のCEOの経営を全面的に否定した格好です。なぜか。売り上げが大きい割に儲からないからです。HPのパソコン事業の利益率は約5%です。アメリカのハイテク業界では非常に低い利益率です。

ドイツのソフトの巨人SAP出身のアポテカーCEOが目指しているのはIBMです。IBMはパソコン部門を中国のレノボに売却し、ITコンサルティングとソフトに経営をシフト、利益率が飛躍的に高まりました。IBMやソフトメーカーのオラクルの利益率は20から45%です。

今回のHPのPC事業で最も衝撃を受けたのは、日本の大手家電メーカーだと思います。パソコンや家電の製造が新興国にシフトする一方、アメリカやヨーロッパのメーカーはハードウェアから撤退または大幅に縮小しソフト会社に大胆に転換しています。  
利益率が5%を低すぎると考えるアメリカの会社と利益がほとんどない日本の家電メーカーのギャップは広がるばかりです。それなら日本のメーカーもソフトにシフトできるかというと、弱い分野ですから、これも難しそうです。HPの株価は2日連続で急落しています。HPの過去を否定した戦略が正しいかどうかは計画通り利益率を上げられるかどうかにかかっています。

[August 19, 2011] No 0104835

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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