2017/09/07NZドルと「ジャシンダマニア」
「9月23日」
1院制で任期3年。ニュージーランドの議会選挙が今月23日に実施されます。突然引退したキー前首相を引き継いだイングリッシュ首相率いる国民党が、無風の4期目勝利をおさめると誰もが思っていました。
しかし、8月1日に最大野党の労働党党首に37歳の女性が選出されたことで状況が一変しました。歴代の党首で最年少。保守的なニュージーランドに新風を吹き込みました。
党首の名前は、Jacinda Ardern(ジャシンダ・アーダン)。彼女の人気で労働党の支持率はうなぎのぼり。世論調査で支持率が39.8%となり、連携する緑の党の6.2%とあわせると、与党・国民党の41.6%を上回ります。国粋主義のニュージーランド・ファースト党と組むことなく、政権を樹立する可能性が浮上しました。
ニュージーランド人は「Jacindamania(ジャシンダマニア)」と呼び、時事通信は「ジャシンダ旋風」と表しました。
国際社会も労働党の若き女性党首に注目しはじめました。アーダン党首は、ラジオとテレビのインタビューで、「出産と仕事のどちらを優先するか」との質問に対し、「2017年のいま、その質問は容認できない」とした上で、「いつ子供をつくるかは女性の権利だ」と返しました。この発言が、オーストラリア人やアメリカ人の共感を呼びました。イギリスでも話題になっています。
アーダン党首のライフスタイルも受けています。政策論議はソーシャルメディアで。ツイッターのフォロワーは8万人を超え、ニュージーランドのどの政治家よりも多いです。音楽祭ではDJをこなし、化粧もファッションもいま風です。
労働党の躍進が世論調査で表面化した先週、NZドルが一時大きく売られました。しかし、今週に入り持ち直しました。異例の若い女性首相も悪くない、との見方が広がったのかしれません。緑の党との2党で連立政権を樹立する可能性が出たことも好感されました。
NZドルは、9月23日の選挙まで、選挙をめぐる思惑が相場に大きく影響しそうです。選挙後に、エコノミストの経済見通しが大幅に修正される可能性があり、その影響も受けそうです。
「豪GDP、予想届かず」
オーストラリア連邦統計局が6日に発表した第2四半期のGDPは、前期比で0.8%増加、前期の0.3%増から伸びが加速しました。前年同期比は1.8%増。ただ、前期比も前年比も予想を下回りました。
6日のオセアニア市場では、豪ドルの対米ドル相場が心理的な節目の0.80台に乗せました。7月31日以来です。しかし、GDPが予想を下回ったことで売られ、0.79台に戻りました。その後開いた欧米マーケットでは、0.80近辺の狭いレンジで推移しました。
オーストラリアの中央銀行は5日の会合で政策金利を1.5%で据え置きました。当面、金利を据え置くと予想されています。相当期間にわたり利下げはないが、利上げもなさそうです。
豪ドルを積極的に買う材料に乏しく、当面はレンジで推移すると多くのストラテジストが予想しています。 対米ドルについては0.80の上値抵抗線が重く、経済も比較的堅調なことから下値が堅いとみられています。
クロス取引の豪ドルの対円相場については、米ドル/円が朝鮮半島情勢やアメリカの政治に敏感に動くため、その影響を大きく受けることが予想されます。
[September 07, 2017 AN0106]
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【データ提供】
松島 新(まつしま あらた)氏

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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