週刊2分でわかる豪・NZ

2017/07/27ドクターコッパー、中立金利、そして伝染病

「2015年5月以来の高値」

銅の価格が今週、2015年5月以来の高値をつけました。

中国の景気減速を背景に銅価格の低迷が続き、世界最大の銅山を抱えるチリの格下げなどにつながりました。しかし、基調が変わりつつあります。最近発表された中国の経済指標が予想外に堅調。IMFは中国の成長率見通しを上方修正しました。米ドル相場が弱含んでいることが銅価格を押し上げました。

銅は英語でCopper(コッパー)と言います。家庭から工場まで、家電や自動車から送電線まで幅広く使われる銅の価格は景気に先行して動くとされ「Ph.D. Copper(ドクターコッパーもしくはコッパー博士)」と呼ばれます。銅価格の上昇は、世界経済、特に最大消費国の中国の景気の先行きに明るい兆しがあることを示すものと受け止められました。

銅は、鉄鉱石や石炭と並びオーストラリアの主要輸出品です。銅価格の上昇が、最近の豪ドル高に寄与したことは明らかです。

「豪ドル高の背景」

豪ドルの対米ドル相場は、今月に入り3.5%上昇しました。26日の欧米マーケットで0.80米ドルちょうど近辺まで上昇、約2年ぶりの高値をつけました。 対円では89円台に乗せました。

オーストラリアの第2四半期の消費者物価指数が前期比0.2%と予想を下回ったことで、豪ドルが一時弱含む局面もありました。一方、オーストラリアの中央銀行(RBA)のロウ総裁が、26日の講演で、金融引き締めで他国に追随することはないと述べました。ただ、豪ドル相場について「少しだけ安いほうがいい」として強い懸念を示さなかったため、本格的な豪ドル売りにはつながりませんでした。それよりも、銅価格の上昇と、一部の期待を裏切ったFRBの声明に大きく反応、豪ドルが買われました。

もう1つ。オーストラリアの中央銀行(RBA)が、18日に公表した金融会合の議事録が引き続き豪ドル買いを誘っています。

議事録では、政策メンバーが中立金利について議論し、3.5%と推定したことが明らかになりました。これが多くの議論を呼びました。

中立金利は、自然利子率、もしくは実質均衡金利とも呼ばれ、緩和でも引き締めでもない中立な視点で試算したものです。ちなみに日本の中立金利はゼロ%程度と推定されていて、マイナス圏の現行水準は緩和的と受けとめられます。

議事録公表前までは、RBAが1.5%の政策金利を少なくとも来年末まで維持すると予想されていました。しかし、議事録公表後は、次の一手は利下げより利上げとの観測が広がりました。

今後、豪ドル高が続くのか。0.85米ドルまで上昇するとの強気な見方が一部であります。対円でも、日豪利回り格差を背景に豪ドル基調が継続するとの見方が少なくありません。

しかし、豪ドル高が経済の足かせになる、インフレ率を押し下げるといずれRBAが強く懸念を表明する可能性が指摘されています。

「NZの中立金利も3.5%」

ニュージーランドの中央銀行(RBNZ)のマクダーモット総裁補は26日、中立金利が4%を下回る3.5%だと試算していることを講演で明らかにしました。RBAと同じ水準。ただ、RBNZの政策金利はRBAより0.25%高い。マクダーモット総裁補はその上で、NZドルの下落が成長に寄与するとの認識を示しました。

NZドルは26日の欧米マーケットで高く取引されました。ニュージーランドの強い貿易統計が寄与しました。ただ、中立金利が予想より低く試算されたこと、さらに乳牛の伝染病拡大への懸念が今後ネガティブに影響する可能性があります。ニュージーランドのメディアによりますと、ニュージーランド南部の牧場で乳牛1頭が病死、150頭が感染したことがわかりました。

NZドルは、当面はマーケット全体の動きに連動するとみられています。しかし、乳製品はニュージーランドの主力輸出品であり、乳牛の伝染病の動向がNZドルに影響すると予想されます。


[July 27, 2017 AN0100] 

※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

NOTE

このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。

Market Editors
【データ提供】

PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

バックナンバー

  • 2018.12.13 更新NZドル、上昇より下落リスク?「予想に反して堅調」オセアニアの大手銀行であるANZは1年前、2018年末のNZドルの対米ドル相場を0.62と予想しました。実際にどうだったのか。NZドルの対米…
  • 2018.12.06 更新豪ドルとNZドル、カナダ中銀の決定に反応か「慎重なカナダ中銀」金融マーケットにおいて、相場の変動の理由は後付けされることが多い。例えば、外国為替マーケットでは、世界経済懸念で円が買われたとか、日米金利格…
  • 2018.11.29 更新パウエル発言の衝撃、豪ドルとNZドル見直されるか「中立金利のわずか下」アメリカの中央銀行にあたるFRBのパウエル議長による28日のニューヨークでの講演がマーケット関係者の注目を集めました。パウエル議長は講演で…
  • 2018.11.22 更新2019年の豪ドルとNZドル、強気な見方「ネガティブ材料」オーストラリアの中央銀行にあたる準備銀行(RBA)は、20日に公表した議事録で、失業率が目立って低下する可能性があるとみていることを明らかにし…
  • 2018.11.15 更新リスク回避ムードで買われた豪ドルとNZドル「期待感」豪ドルはリスクのバロメーターとされています。マーケットでリスク選好ムードが強まった局面では豪ドルが買われ、反対にリスク回避ムードが高まった際は豪ドルが…

「週刊2分でわかる豪・NZ」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ