週刊2分でわかる豪・NZ

2017/06/22豪ドルめぐる2つのネガティブ

「鉄鉱石見通し」

このところ堅調に推移していた豪ドルに今週、2つのネガティブなニュースが出ました。

1つ目は、シティグループのオーストラリアとブラジルの2人のアナリストが書いたレポート。ロイターによりますと、2人のアナリストは、2017年の鉄鉱石価格の見通しを70米ドルから61米ドルに下方修正。2018年の見通しについても53米ドルから50米ドルに引き下げました。

アナリストは、鉄鉱石の在庫が去年の6000万トンから1億トン以上に増える可能性があり、さらに相場が下がるリスクがあると警告しました。45米ドルまで下落する可能性があり、コスト高のオーストラリアの鉱山業者に打撃となるだろうとコメントしました。

もう1つのネガティブ要因は、アメリカの格付け会社ムーディーズの19日の発表。ANZ、コモンウエルス、NAB、そしてウエストパックの4大銀行の長期格付けを1段階引き下げ「Aa3」としました。さらに8つの金融機関についても格下げしました。

格下げの理由についてムーディーズは、「住宅市場に関連したリスクが急速に高まった」と指摘したうえで、家計債務の増加と賃金の伸び悩みがオーストラリアの銀行の脅威になっていると説明しました。

過熱する住宅市場を背景にした家計債務増加の懸念は、中央銀行も共有しています。オーストラリア中銀(RBA)が20日公表した議事録で明らかになりました。

「中国の影」

シティとムーディーズの動きには、中国の影響があります。

シティが指摘した鉄鉱石在庫のほとんどは中国。オーストラリアにとって鉄鉱石は最重要の輸出品ですが、大半は中国への輸出です。中国経済の減速を背景に、鉄鉱石価格が下振れするリスクが幅広く指摘されています。

銀行の格下げにつながった住宅については、中国人の投資行動が影響しています。オーストラリア政府は、不動産市場の過熱を抑制するため、外国人の購入者を対象とした規制を行ってきました。最大都市シドニーでは、外国人の不動産購入税を導入しました。

中国人投資家がオーストラリアの不動産物件に背を向け始めたと地元メディアが伝えています。オーストラリアの不動産市場で急速な価格調整が進むとの指摘が少なくありません。オーストラリアの銀行は、住宅ローン融資に大きく依存しています。

モルガン・スタンレーのストラテジストは、「銀行が脆弱な住宅市場の打撃を受けるうえに、鉄鉱石価格が下落基調にある」としたうえで、豪ドルを再び売るタイミングをみることになると独立系のポンドスターリングライブにコメントしました。

コモディティを代表する原油が20日の欧米マーケットでベア(弱気)マーケット入りしたことも豪ドルにネガティブに影響しています。目先はコモディティ相場をにらんだ展開が予想されますが、上値は重いとみられます。

ナショナルオーストラリア銀行は最新のレポートの中で、豪米の金利が逆転した2000年代初めに豪ドルの対米ドル相場が0.50米ドル割れまで急落したが、アメリカのFRBの追加利上げで金利格差に変化があっても豪ドルへのネガティブな影響はマイルドになるだろうとコメントしました。興味深いです。

「金利据え置き」

ニュージーランドの中央銀行(RBNZ)は22日、政策金利を1.75%に据え置くと発表しました。予想通り。低インフレなどについてやや楽観的なトーンの声明。相場への影響は限定的でした。

NZドルは今週やや軟調ですが、豪ドルに比べて下値の堅さが目立ちます。マーケット全体のムードに左右される展開が予想されますが、豪ドルとは異なる動きになる可能性もありそうです。


 [June 22, 2017 AN0095]   

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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