週刊2分でわかる豪・NZ

2017/06/01豪が「幸運の国」でなくなる日

「ラッキーカントリー」

2年前にオーストラリアのジェトロのシドニー事務所を訪ねた際、「オーストラリアはラッキーカントリー(幸運の国)」だとの説明を受けました。およそ2400万人の国民が、温暖な気候、強固な経済基盤、豊富な資源に恵まれた大陸を独り占めしているからです。数十年にわたってそう言われてきたとの解説でした。

そして去年8月。フィナンシャル・タイムズ(FT)が「Why Australia’s luck may be running out(オーストラリアの幸運が尽きそうな理由)」と題した記事を掲載しました。この中でFTは、アメリカと中国が要求の多いパートナーに変わったとして、「21世紀はオーストラリアがそれほど幸運ではないかもしれない」と伝えました。

最後に前々日。シドニー・モーニング・ヘラルドが「ラッキーカントリーが遅れをとっている」と報じました。オーストラリアの通貨と株式相場が先進国の中で最もパフォーマンスが悪いとしています。

アメリカの代表的な株式指数であるS&P500は今年に入って7.9%上昇しました。一方、オーストラリアの主要指数であるASX200は横ばい。

通貨もパッとしません。過去3カ月の豪ドルの対米ドル相場は、主要な先進国の中で最悪のパフォーマンスでした。

通貨安と株安の背景には、オーストラリアの主力輸出品である鉄鉱石の価格が2008年以来で最も速いペースで下落したことがあります。下落基調がまだ続いています。過去最低水準の政策金利を続けるオーストラリア中銀(RBA)が利下げする確率が20%程度あるとされることも通貨安を誘っています。

オーストラリアの経済規模は世界第13位。3大格付け会社による最高格付け「AAA」を維持しています。しかし、最高格付けが危なくなっています。

S&Pの幹部がABCのインタビューの中で、オーストラリアの対外債務の大きさを指摘、銀行部門が脆弱だと述べました。その上で、「AAAの国は12カ国あるが、オーストラリアほど対外債務が大きい国はない」とコメントしました。S&Pは、オーストラリアのアウトルック(見通し)をネガティブにしています。

取り巻く環境が大きく変わりました。この2年間でラッキーなオーストラリアに対する見方も変わりました

「弱気な見方」

コモディティ相場の下落、マーケット全体のリスク回避ムードを受け、豪ドルが軟調に推移しています。当面、下落基調が続くとの見方が少なくありません。

目先の材料は、6日のRBAの政策金利発表と声明。そして、翌7日の第1四半期(1-3月)のGDP。特に、GDPの注目度が高いです。

ANZは最新のレポートの中で、第1四半期のGDPが弱くなりそうだとコメントしました。前期比で0.1%の伸びにとどまると予想、下振れリスクもあるとの見方。所得の伸びが鈍いことを背景に家計支出が弱く、年後半の成長見通しを下方修正するかもしれないとしています。

ANZは6月末の豪ドルの対米ドル相場を0.76米ドルと予想していますが、すでにその水準を下回って下落しました。87円との対円相場の見通しも大きく下回っています。いずれ見通しを豪ドル安方向に修正する可能性がありそうです。

「下値堅い」

スイスのIMD世界競争力センターの最新のランキングで、ニュージーランドの総合競争力は16位。2016年から横ばい。オーストラリアは17位から21位にランクを落としました。

オセアニアの2カ国は文化が類似、経済的な連携も盛んです。ただ、陰りがみえるオーストラリアと比べ、ニュージーランド経済は堅調です。主力輸出品の乳製品価格が上昇基調に転じたほか、経済データが良好です。

マーケット全体のリスク回避ムードの影響でNZドルがやや軟調に推移していますが、豪ドルと比べ下値が堅い。ANZは 、NZドルが豪ドルより良いパフォーマンスを示すとの見方を維持するとコメントしました。

目先のNZドルは、マーケット全体のムードに左右されるとみられていますが、下値が堅いと予想されています。


[June 01, 2017 AN0092] 

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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