週刊2分でわかる豪・NZ

2017/05/04歴史的に5月は豪ドル安、「3つのC」が重い

「FRBにらむ」

アメリカのFRBが3日午後、金融政策を決める会合(FOMC)で政策金利を据え置くことを決めました。予想通りでした。会合後に発表された声明は、早ければ6月の会合で利上げする可能性を残しました。

6月13日と14日に開かれる次回のFOMCでは、声明に加え、経済見通しが公表されます。また、イエレン議長の記者会見も予定されています。利上げの背景を詳しく説明できるため、追加利上げがあるとの見方が根強くあります。6月に利上げを見送れば、次の機会は9月の会合になると予想されています。

このところ、アメリカの経済指標はまちまちですが、年内あと2回の利上げがあるとの予想がほぼコンセンサスになっています。アメリカの政策金利が年末までに1.25-1.50%になるとの見方です。2018年も緩やかな追加利上げがあるとの予想が優勢です。

一方、オーストラリアの中央銀行(RBA)は2日の金融政策委員会で政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レートを過去最低の1.50%で据え置くことを決めました。8会合連続での据え置き。声明で経済成長について楽観的な見通しを示す一方で、賃金の伸びの鈍さを指摘しました。

RBAの声明を受けて、政策金利が少なくとも来年半ばまで据え置かれるとの見方が広がりました。

「3つのC」

アメリカのFRBの政策金利が来年にもRBAの金利水準を上回る可能性が高い。この見方が豪ドルの上値を抑えています。

2007−08年の金融危機を受け、世界の主要な中央銀行の多くが相次いで金融緩和に動きました。FRBは事実上の「ゼロ金利」を導入しました。その一方、RBAとニュージーランドの中央銀行(RBNZ)は比較的高い政策金利を維持しました。

これを受け、Carry Trade(キャリートレード)の資金がオーストラリアとニュージーランドに流入しました。キャリートレードとは、金利の低い通貨で調達した資金を、高金利の通貨や金融資産に投資することを意味する金融用語です。

特に、経済規模が大きいオーストラリアへは大量の米ドル資金が流入。超低金利の日本円で調達した資金の流入も加速しました。このうち、「米ドル・キャリートレード」資金が、金融政策の変化を受けて巻き戻るとの観測が広がっています。すでに巻き戻しがはじまったとみられます。これが1つ目のC。

2つ目のCは、China(中国)です。中国は、オーストラリアの最大の貿易相手国。政府統計によりますと、香港を除く中国への輸出が全体の33%を占めます。断トツの1位。さらに、中国人、中国企業よる投資も盛んで、オーストラリア経済を支えています。よって、中国経済の減速は豪ドルに影響します。2日に発表された中国の製造業購買担当者景気指数が低下、予想を下回りました。

中国経済の影響を受けるCommodity(コモディティもしくは商品)価格が軟化していることも豪ドルの重石になっています。オーストラリアの主力輸出品は鉱物・資源です。鉄鉱石が輸出全体の約25%、石炭が約15%。合計で約40%を占める計算です。

Carry Trade、 China、 CommodityのイニシャルがそれぞれC。3つのCが、最近の豪ドル安の背景です。

「季節要因」

豪ドルに関し、目先の注目は9日夜に発表される政府予算です。内容によっては、オーストラリアの最高格付け「AAA」の引き下げ観測が再燃する可能性があります。

通貨情報のポンドスターリングライブは、5月は歴史的に米ドルが高く、豪ドルが安い月だと伝えました。過去10年のうち7年、豪ドルの対米ドル相場が下落したとしています。加えて、先物相場も豪ドル安が続くことを示唆していると解説しました。

5月という季節要因と3つのCで、豪ドルは軟調な展開が続くと予想されています。対円相場は83円台と豪ドル安水準で推移していますが、クロス取引であるため米ドル/円相場に左右される展開が続きそうです。

ニュージーランドも3つのCの影響を受けますが、コモディティについては、オーストラリアとやや異なります。主力輸出品が乳製品だからです。2日のGDTオークションでは価格指数が4オークション連続で上昇しました。経済指標は全体的に堅調。ニュージーランドの政策金利は1.75%で、オーストラリアよりやや高い。

ANZやBNZなど金融機関のエコノミストは、緩やかなNZドル安を予想しています。ただ、下落率は、豪ドルに比べ小幅になるかもしれません。ANZは、「NZドルの下落基調が続くが、下げは限定的になるだろう」と最新のレポートでコメントしました。
 
[May 04, 2017 AN0088]

※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

NOTE

このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。

Market Editors
【データ提供】

PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

バックナンバー

  • 2018.12.13 更新NZドル、上昇より下落リスク?「予想に反して堅調」オセアニアの大手銀行であるANZは1年前、2018年末のNZドルの対米ドル相場を0.62と予想しました。実際にどうだったのか。NZドルの対米…
  • 2018.12.06 更新豪ドルとNZドル、カナダ中銀の決定に反応か「慎重なカナダ中銀」金融マーケットにおいて、相場の変動の理由は後付けされることが多い。例えば、外国為替マーケットでは、世界経済懸念で円が買われたとか、日米金利格…
  • 2018.11.29 更新パウエル発言の衝撃、豪ドルとNZドル見直されるか「中立金利のわずか下」アメリカの中央銀行にあたるFRBのパウエル議長による28日のニューヨークでの講演がマーケット関係者の注目を集めました。パウエル議長は講演で…
  • 2018.11.22 更新2019年の豪ドルとNZドル、強気な見方「ネガティブ材料」オーストラリアの中央銀行にあたる準備銀行(RBA)は、20日に公表した議事録で、失業率が目立って低下する可能性があるとみていることを明らかにし…
  • 2018.11.15 更新リスク回避ムードで買われた豪ドルとNZドル「期待感」豪ドルはリスクのバロメーターとされています。マーケットでリスク選好ムードが強まった局面では豪ドルが買われ、反対にリスク回避ムードが高まった際は豪ドルが…

「週刊2分でわかる豪・NZ」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ