週刊2分でわかる豪・NZ

2017/04/20豪政府がトランプ追随、軟調な豪ドル

「H1Bと457」

外国人が、アメリカで90日を超えて勉強、もしくは仕事をする場合、ビザの取得が必要です。学生のFビザ、企業幹部向けのLビザ、一部の国の投資家や貿易関係者を対象にしたEビザ、スポーツ選手や芸能関係者向けのOビザなど多くの種類のビザがあります。そして、高度の専門性を持つ人、もしくは特殊技能を持つ人を対象にしたビザがH1B(エイチワンビー)です。最大7年までアメリカに滞在できます。

アメリカ政府は年に8万5000件のH1Bビザを発行していますが、申請者が多いため、毎年抽選になります。結果として、低賃金労働者がH1Bを取得する一方、高度の技術を持つ人が外れる可能性があります。

アメリカのトランプ大統領は18日、H1Bビザが悪用されていないかを各省庁に調査するよう命じる大統領令に署名しました。調査の結果次第では、新たな大統領令や法律の制定につながる可能性があります。トランプ政権はビザ審査の厳格化を進めています。アメリカ人の雇用を守ることが目的です。

アメリカがビザ審査を厳格したことで、インドがパニックになっているとアメリカの主要メディアが伝えています。インドの財閥タタ・グループのITコンサルティング会社が欧米などにエンジニアやプログラマーらを大量に派遣しています。一方、グーグルなどシリコンバレーの企業は業務に打撃になると懸念しています。日本人にも影響が出ると思います。

オーストラリア政府も追随します。トランプ大統領に触発されたのかもしれません。ターンブル首相が、現在の「457ビザ」に代わる厳格なビザの導入を表明しました。地元紙が連日伝えています。オーストラリア人の職を守るための策だと解説しています。

「457」は、料理人、IT専門家、医療関係者らに与えられるビザ。政府統計によりますと、去年、9万5758件の「457ビザ」が発給されました。インド人が最も多く全体の24.6%、イギリス人が19.5%で続き、3位は、中国人(5.8%)。2月にオーストラリアを訪問した際、タクシーの運転手がイラン人とインド人でしたが、いずれも「457ビザ」で滞在していたのだと思います。

「457ビザ」の審査がゆるい、オーストラリア人の職を奪っているとの批判を受け、犯罪経歴証明書の提出、英語力と専門知識も申請条件に加えられました。これまでは滞在期間を何年も延長できましたが、今後は2年ないし4年に限定されます。

「豪ドル軟調」

イースター明けの外国為替マーケットで、豪ドルが軟調に推移しています。18日に公表されたオーストラリア中銀の議事録が、低金利が長期間続くことを示唆したことが影響しています。さらに、オーストラリアの主力輸出品である鉄鉱石の価格が下落したことが重しとなっています。

地政学リスク、特に朝鮮半島の緊張も豪ドル安要因となっています。安全資産とされる円やスイスフラン、そして米国債に投資家の資金が向かっています。いわゆる「リスクオフ」の局面では、豪ドルが売られやすくなります。

低金利、鉄鉱石価格の下落、そして地政学リスクを背景に、豪ドルが目先軟調に推移するとみられています。テクニカル分析では、対米ドル相場が0.75米ドルを割って豪ドル安が一段と進むかが注目されています。その場合、クロス取引の対円相場も下振れする可能性が高いとみられています。

「NZドルは比較的安定」

豪ドルとやや異なり、NZドルは比較的安定しています。18日のフォンテラ主導の乳製品オークションが堅調だったこともNZドルを支えました。GDT価格指数が3オークション連続で上昇しました。

マーケット関係者の間で、NZドルが売られすぎとの見方があります。このため、NZドルは安定した相場が続く可能性があります。ただ、豪ドル同様に地政学リスクが大きく影響するため、下振れする可能性も残ります。コモディティ価格が下落する局面では、豪ドルに連れ安する可能性もありそうです。


 [April 20, 2017 AN0086] 

※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

NOTE

このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。

Market Editors
【データ提供】

PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

バックナンバー

  • 2019.02.14 更新NZドルと豪ドル、微妙な違いが相場に反映「RBNZ、中立トーン」ニュージーランドの中央銀行である準備銀行(RBNZ)が、ウェリントンの本部で13日に開いた金融政策委員会で、政策金利のオフィシャルキャッ…
  • 2019.02.07 更新豪ドル方向変えたRBA、NZドルはどうか「豪ドル上下に振れる」オーストラリアの中央銀行にあたる準備銀行(RBA)が、5日の金融政策委員会で政策金利のオフィシャル・キャッシュレートを1.50%に据え置く…
  • 2019.01.31 更新動く豪ドル、方向決めるRBA「豪ドル振れる」年末から年始にかけて豪ドル相場は軟調に推移しました。シドニーやメルボルンなど都市圏を中心に住宅価格の下落が止まらないことが背景にあります。住宅ロ…
  • 2019.01.24 更新豪ドルめぐる見方、上値重いか「RBAも?」先週のレポートで、ニュージーランドの中央銀行にあたる準備銀行(RBNZ)が年内にも利下げに転じるとの予想が増えているとお伝えしました。ニュージーラ…
  • 2019.01.17 更新豪ドルとNZドルの相場観「上値重いNZドル」このところ、NZドル相場の上値の重さが目立ちます。米中の貿易をめぐる協議の進展、中国政府の景気刺激策、堅調な乳製品のオークション。ポジティブ…

「週刊2分でわかる豪・NZ」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ