週刊2分でわかる豪・NZ

2017/04/06復活した「豪1%まで利下げ」予想

「住宅バブルか」

2月にオーストラリアの最大都市シドニーを訪れた際、建設現場がやたら多いと感じました。地下鉄工事のほか、建設途中の高層ビルが何棟もありました。中心部は相変わらず中国人が多い。2年前に訪問した時よりさらに増えたのではないかと感じました。

シドニーの中古アパートの価格が、2016年に前年比で10.3%上昇しました。一戸建ても6.1%高くなりました。コアロジックによりますと、シドニーの住宅価格は2008年の2倍になりました。

シドニー・ヘラルドなど地元メディアは、「住宅バブルの兆候がある」と連日のように伝えています。住宅価格を押し上げているのは人口の増加と分析されています。特に中国人などの外国人の流入が影響しています。投機的な買いも相場の押し上げ要因と指摘されています。住宅価格は2017年も上がり続けています。住宅ローンの規制が強化されつつありますが、熱が冷める気配はまだありません。

「声明がサプライズ」

オーストラリア中銀(RBA)は、4日の金融政策委員会で政策金利のオフィシャル・キャッシュ・レートを1.5%に据え置きました。これは予想通りでした。

ロウ総裁の声明では、「最近のデータは緩やかな成長と整合性がある」としながらも、「労働市場が示す一部の経済指標は最近軟化している。失業率がやや上昇しているほか、雇用の伸びが小幅になっている」と指摘しました。楽観的な声明を予想していたエコノミストらにサプライズになりました。

ブルームバーグは、RBAが住宅市場の過熱で金融緩和に踏み切れない一方、引き締めるには景気が力強さを欠き、一種の政策マヒ状態に陥っていると解説しました。

金融政策の方向が一気に不透明になりました。

「見方分かれる」

今年2月初めに、RBAのエコノミストと面談した際、オーストラリア経済が堅調で、利下げ予想が完全になくなったことが話題になりました。大手民間銀行ANZのエコノミストも利下げはもうないとの見方でした。

しかし、ここにきて利下げ予想が再び増えました。フィナンシャル・レビューによりますと、JPモルガンと野村のエコノミストは、RBAが今年第3四半期に政策金利を0.25%引き下げ、1.25%にすると予想しています。キャピタル・エコノミストには1%まで利下げすると予想するアナリストがいます。

一方で、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ、ムーディーズ・アナリティックス、IHSエコノミクス、HSBC、そしてINGのエコノミストは来年の第1四半期(1-3月)にRBAが1.75%に利上げするとみています。完全に反対の見方。

面白いのは、オーストラリアの4大銀行のうち、ANZ、ナショナル・オーストラリア銀行、ウェストパックの3行が、2018年末まで1.5%に政策金利が据え置かれると予想していることです。利下げも利上げもないとの見方。もう一つのコモンウェルス銀行は、2018年第4四半期まで金利が据え置かれた後、1.75%に利上げされるとみています。

これだけ極端に金融政策の方向に関する見方が分かれるのは極めて異例。不透明感の強さが、豪ドルの重石になっています。RBAがサプライズ声明を出して以降、豪ドルが軟調に推移しています。5日の取引では反発しましたが、上値の重さが意識されました。

豪ドルは当面、シドニーなどの住宅市場と雇用関連の指標をにらんだ展開が予想されます。不透明感が続く限り、上値は重そうです。

「RBNZは利上げ方向か」

ニュージーランドの中央銀行(RBNZ)の政策金利については、現行の1.75%に当面据え置かれるとの見方が優勢です。ANZは、「次の動きは利上げだろう」と最新のレポートでコメントしました。

NZドルについてANZは、当面の間、レンジで推移するだろうとしています。一方、バンク・オブ・ニュージーランドは、NZドルにやや売られ過ぎ感があると指摘、反発する可能性があるとコメントしました。ただ、マーケット全体の心理が影響しそうだとしています。

目先は、最大貿易相手国の中国の習近平国家主席とアメリカのトランプ大統領による米中首脳会談の行方が最大の材料です。豪ドルやNZドルにも影響するとみられます。


 [April 06, 2017 AN0084]

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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