週刊2分でわかる豪・NZ

2017/02/02RBAエコノミストに豪ドルを聞く

「ブラックアウト直前」

オーストラリアのシドニーに出張中です。中心部CBDのマーティン・プレイス65番地にある中央銀行(RBA)を訪ねました。RBAはシドニーが本拠地。国内には、メルボルン、キャンベラの拠点に加え、4つの都市に支店があります。全職員数は1100人、そのうち600人はエコノミストです。エコノミストは、ロウ総裁を含め幹部に報告する月間レポートのほか、デイリーベースでコメントを内部向けに出しています。

RBAのエコノミストのひとり、リン・コッカーレルさんと面談しました。RBAは来週7日に金融政策委員会を開くため、1日の午後から外部にコメントできない「ブラックアウト期間」に入ります。その直前に会いました。

「政策金利は据え置きか」

中央銀行のエコノミストなので、会合前に政策金利がどうなりそうかは当然言えません。ただ、オーストラリア経済が緩やかに成長、コモディティ価格が落ち着いていると分析、インフレ率がまだ低いものの、中期的には中銀目標の2〜3%に達する見通しだとコッカーレルさんが考えていることなどから、7日の会合では、政策金利を据え置く可能性が高いとの印象を得ました。

興味深かったのは、失業率が低水準で推移していることについて、パートタイムの増加が影響していて、あまり参考にはならないと分析していることです。コッカーレルさんが問題だと指摘したのは、賃金の伸びが鈍いことでした。オーストラリア全体では、鉄鉱石や石炭など炭鉱がけん引する経済からサービス業中心の経済へ移行しつつあり、雇用統計にも影響しているとの見方を示しました。

さらに、オーストラリアの貿易全体の3分の1を占める中国経済の動向にも注目しているとコメントしました。RBAは、北京に事務所を置き、中国経済を分析しているそうです。

「豪ドルはリーズナブル」

コッカーレルさんは、豪ドル相場について直接な言及は避けました。ただ、現在の水準を「リーズナブル」と述べていて、RBAが容認できる水準であることを示唆しました。

RBAは、2012年の声明で「豪ドル高」に対するけん制を繰り返しました。しかし、最近の声明ではトーンが和らいでいます。スティーブンス前総裁は去年9月に退任する前に「豪ドルが適切な水準にある」との考えを示しましたが、その見方が継続しているのではないかと思います。

去年11月8日のアメリカの大統領選の後、いわゆる「トランプ・ラリー」でユーロ、ポンド、円などの主要通貨や新興国通貨が大きく変動しました。豪ドルは選挙直後こそ弱含んだものの、すぐに持ち直しました。豪ドルが安定、レンジで推移するとRBAが見ている可能性があります。

「ANZのエコノミスト」

RBA訪問後、オセアニア最大の銀行ANZ(エーエヌゼットと発音します)の本社を訪ねました。チーフエコノミストのフィリシティ・エメットさんの意見を聞きました。

エメットさんは、RBAが7日の金融政策委員会で政策金利を現行の1.5%で据え置くと予想しました。2018年末までRBAが政策金利を変更しないとの見方でした。ただ、想定よりも早く、2018年中にもRBAが利上げに踏み切る可能性があるとコメントしました。

去年夏ごろまでは、RBAが1%まで利下げするとの見方が少なくありませんでした。最近では、当面は据え置き、利下げよりも利上げという見方が増えています。

エメットさんの景気認識はRBAとほぼ一致していました。しかし、豪ドル相場の見方にはやや違いがありました。エメットさんは、豪ドルの対米ドル相場が緩やかに下落し、2018年3月には0.66ドルをつけると予想。そして、2018年の後半に上昇に転じると予想しています。クロス取引の対円については、2018年3月末までに75円90銭まで緩やかに下落すると予想しています。豪ドル相場に最も影響するのは、アメリカのFRBの金融政策だとしています。

また、エメットさんは来週10日にRBAが発表する経済見通しについて、成長率予想を下方修正するのではないかと見ています。注目していると語りました。
 
 [February 02, 2017 AN0075]

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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