週刊2分でわかる豪・NZ

2018/05/17投資家を悲観させたデータ

「賃金が増えない」


オーストラリア統計局が16日発表した第1四半期(1−3月)の賃金価格指数は、季節調整済みで前期比0.5%の上昇でした。


前年比では2.1%上昇。伸び率は過去最低の1.9%を辛うじて上回りました。過去2番目の弱さ。民間企業の賃金の伸びは1.9%にとどまり、公務員の賃金は2.3%上昇しました。


オーストラリアのインフレは年率で1.9%。つまり、民間企業に勤める人は物価上昇分を差し引くと賃金が増えていない計算になります。


マーケットは賃金の上昇を期待していませんでした。コンセンサスは前期比0.6%上昇。弱気な市場予想を下回ったことになります。2017年第4四半期(10−12月)が強かった反動もあり、投資家にとってネガティブなデータでした。


オーストラリアの中央銀行(RBA)は、賃金が2%程度しか伸びない場合、物価が目標の2〜3%まで上昇するのは難しいとコメントしています。


ターンブル政権が先週発表した2018/19年度の予算は、賃金上昇率が2.75%となることを前提にしていました。予算に関しても不透明感を高める結果になりました。


ABCは、オーストラリアの賃金上昇が正常化するまでに何年もかかるとの専門家の見方を取り上げました。シドニーモーニングヘラルドは、2020年までに賃金上昇率が2.5%に達することはなさそうだとするキャピタル・エコノミクスのエコノミストのコメントを紹介しました。


「RBA利上げ遠のく」


弱い賃金上昇が豪ドルの見通しを悪化させたとポンドスターリングライブが伝えました。


16日のオセアニア市場では、データ発表を受け豪ドルが売られました。続く欧米市場では豪ドルが買い戻されましたが、弱気な見通しが少なくありません。


背景には、RBAの利上げは遠のいたとの見方が増えたことがあります。RBAは過去最低の1.50%の政策金利を2年間維持しています。次は利上げとの予想が優勢ですが、時期は2019年、あるいはさらに先になる可能性があるとの見方が少なくありません。


ポンドスターリングライブによると、TD証券のストラテジストは、RBAが2018年中に利上げすると予想する少数派でしたが、弱い賃金上昇率を受け利上げ予想を2019年に修正しました。


同じコモンウエルスで、比較されることが多いカナダの中央銀行は年内に追加利上げすると予想されています。イングランド銀行のカーニー総裁は年内に利上げする可能性を示唆しています。かつて高金利という優位性があった豪ドルは、金融政策の方向、金利格差を背景に、上値の重い展開が続く可能性があります。


豪ドルについては、17日発表のオーストラリアの雇用統計、来月4日の小売売上高、そして、5日のRBAの金融政策委員会が当面の材料です。


「RBNZはどうか」

ニュージーランドの中央銀行RBNZは、先週の金融政策を決める会合後に公表した経済見通しで、政策金利の引き上げは2019年後半になると予想しました。


通貨先物市場の偏りが解消され、NZドルの売り圧力が和らぎました。しかし、アメリカのFRBをはじめ主要な中央銀行の多くが利上げ方向にある一方で、RBNZが当面、過去最低の1.75%を維持するとみられることがNZドルを圧迫しています。豪ドルと同様です。


3カ月前に0.74米ドルだったNZドルの対米ドル相場は0.68米ドル台まで下落しました。輸出を押し上げ、主力の乳製品に勢いが出ています。15日の乳製品オークションは堅調で、GDT価格指数が1.9%上昇しました。その一方で、ガソリン価格が上昇し消費者の負担が増えるなどの影響が出ています。


NZドルは金融政策の方向を材料に、当面上値が重い展開が続くとの予想が優勢です。目先の材料は21日発表のニュージーランドの小売売上高となりそうです。


 [May 17, 2018 AN0141] 
 

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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