2018/03/08豪ドルに下押し圧力
「予想下回るGDP」
オーストラリア政府の統計局が7日発表した2017年10−12月期の国内総生産(GDP)は前期比で0.4%増。前年同期比で2.4%増えました。いずれも予想に届きませんでした。2017年通期の成長率は2.3%増で、26年連続のプラス成長でした。
個人消費が堅調、企業投資が予想されたほど弱くありませんでした。一方で、輸出が減少、住宅以外の建設が前期比で8%減りました。賃金の伸びの弱さもあらためて浮き彫りになりました。
シドニー・モーニング・ヘラルドは、オーストラリア経済が減速、わずか2.4%しか成長しなかったと報じました。
予想を下回ったGDPを受け、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)のエコノミストは、オーストラリアの中央銀行(RBA)が今年末まで政策金利を据え置くことが予想されるとコメントしました。
RBAは6日、金融政策委員会で過去最低の1.5%の政策金利を維持することを決めました。17会合連続の据え置き。ロウ総裁は声明で、「労働コストの低い伸びと小売業界の競争を反映してインフレ率が当面の間、低水準にとどまる公算が大きい」との認識を示しました。
BISオックスフォード・エコノミクスのマクロ担当エコノミストは、利上げが当面なく、利上げがあるとすれば2019年後半の可能性が高い」とブルームバーグにコメントしました。
慎重なRBA、予想を下回ったGDPを受け、強弱感があるものの、利上げは当面ないとの見方でマーケット関係者は一致しています。アメリカのFRBが年内に3回もしくは4回の追加利上げをする方向。米豪の金利格差が逆転する見通しが、豪ドルの下押し圧力になっています。
「トランプ関税」
RBAのロウ総裁は7日、アメリカのトランプ大統領が表明した鉄鋼とアルミニウムの輸入を制限する計画を「大変遺憾だ」と述べ、強い懸念を表明しました。世界経済に「非常に大きなショックになる」としています。
ターンブル首相もトランプ関税を批判。訪米中のビショップ外相は、輸入制限を撤回するようアメリカ政府に求めました。高率の関税が課されれば、オーストリア経済が景気後退に陥るとの懸念を表明しました。
アメリカが保護貿易に傾いていることも豪ドルのネガティブ要因になっています。ホワイトハウスのサンダース報道官は、トランプ大統領が予定どおり今週中に鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動すると述べました。CNBCは、輸入制限が幅広い輸入品に拡大する可能性があると報じました。
豪ドルが軟調に推移するとの予想が少なくありません。
中期的にも豪ドル安が進むとの見方が優勢。ANZは、豪ドルの対米ドル相場が年末に0.72米ドルに、対円相場は74.20円に下落すると予想しています。
「NZも懸念」
トランプ関税に対する警戒がニュージーランドでも広がっています。ニュージーランドのアメリカに対する鉄鋼とアルミニウムの輸出額は約6000万NZドルと少ない。ただ、アメリカが対EU、対中国で強硬姿勢を続け、貿易戦争に発展すれば話は別。ニュージーランドの主力輸出品である農産物、乳製品の輸出に打撃となるとの懸念があります。
NZドルは当面、トランプ政権の通商政策に敏感になると予想されます。クロス取引の対円相場については、米ドル/円の振れが大きくなっていますので、その影響を受ける可能性があります。
NZドルの当面の材料は15日発表のニュージーランドの10−12月期のGDP。そして、22日のNZ中銀の金融政策を決める会合です。
[March 08, 2018 AN0132]
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【データ提供】
松島 新(まつしま あらた)氏

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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