週刊2分でわかる豪・NZ

2017/10/26売られた豪ドル、NZは「10年呪い」?

「豪利上げ期待後退」

26日のオセアニア、続く欧米のマーケットで、豪ドルが大きく売られました。オーストラリア政府の統計局が発表した第3四半期の消費者物価指数が予想を下回ったことに反応しました。

第3四半期の消費者物価指数は、前期比で0.6%上昇、前年比で1.8%上昇しました。オーストラリアの中央銀行(RBA)のインフレ目標である2 〜3%を下回りました。

電気が前期比で8.9%も上昇しました。その一方で、野菜価格が10.9%低下、燃料費は2.3%安くなりました。変動が激しい項目を除いたコア指数も予想に届きませんでした。

ドイツ銀行のエコノミストは、賃金の伸びが鈍く、消費者物価コア指数が一段と低下する可能性があるとABCにコメントしました。キャピタルエコノミクスのエコノミストは、RBAが来年いっぱい1.5%の政策金利を維持すると予想。AMPのエコノミストもRBAの利上げを正当化する内容ではないとコメントしました。

ANZが先に来年0.5%の利上げを予想しました。マーケット関係者の間では、消費者物価指数の最新統計を受け、近い将来の利上げの可能性が大きく後退したとの見方が優勢になりました。

BKアセットマネージメントのストラテジストは、RBA利上げ観測が後退、物価上昇の兆しが出るまでオーストラリアの国債利回りが一段と低下することが予想されるとコメントしました。

豪ドルが当面、軟調に推移する可能性があります。対米ドル相場が200日移動平均の0.77米ドルを本格的に割るか注目を集めています。対円相場は87円を割って豪ドル安が進むかが注目。クロス取引のため、動きが出てきた米ドル/円相場の影響も受けそうです。

「保護主義的アプローチ」

NZドルが軟調に推移しています。先月23日の総選挙以降、連立樹立の不透明感からNZドルが売られました。そして、第3党のNZファースト党が第2党の労働党を連立相手に選んだ「サプライズ」で、売りが加速しました。

労働党・NZファースト党・緑の党の3党連立政権が近く発足しますが、今度は政策の方向への懸念がNZドルにネガティブに影響しそうです。

新首相に就任する労働党のアーダーン党首の最近の発言から、国民党の前政権から政策を大きく転換することが少しずつ見えてきました。

総選挙の争点となった住宅問題については、格安住宅を今後10年で10万件建設する計画を明らかにしています。同時に、外国人の中古住宅購入の禁止と地方の土地の購入を制限する方針も示しました。

移民については、現在は年7万人のペースで受け入れていますが、2020年までに2万人に減らす方針も示しました。NZファースト党が連立の条件の1つとして求めたようです。

ニュージーランドの中央銀行(RBNZ)について、NZファースト党のピータース党首は「シンガポール型モデル」を主張しました。インフレ率よりもNZドルの為替レートを重視するよう中央銀行法の改正を求めました。労働党のアーダーン党首がどこまで譲歩したかは不明ですが、RBNZの役割がある程度修正される可能性があります。

マーケット関係者は、いずれの政策も経済に悪い影響となると懸念しています。

ANZのニュージーランド部門は、「10年の呪い?」と題する最新のレポートで、ニュージーランド経済が10年ごとに悪化しているとの分析をまとめました。1968年以降、10年ごとに景気後退していて、来年2018年に「呪い」で景気後退するかもしれないとしています。偶然ですが、9年ぶりに政権交代した労働党主導の連立政府が来年、本格的に稼働します。

カンタベリー大学経済学部のヒクソン教授は、新政権が資本主義を批判しているとした上で、「間違っている」と主張するコラムを地元メディアに寄稿しました。

新政権の政策の不透明感、保護主義へ傾くとの懸念などで、NZドルは当面軟調に取引されるとの見方が優勢です。ただ、いずれ落ち着くのではないかとの見方も一部あります。

NZドルの対米ドル相場は、6カ月安値の0.685米ドルを本格的に割るかが注目です。国民党主導の前政権時代の2015年9月には、一時0.625米ドルまで下落しました。クロス取引の対円相場は、米ドル/円に左右されることが予想されます。


 [October 26, 2017 AN0113] 

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

NOTE

このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。

Market Editors
【データ提供】

PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

バックナンバー

  • 2018.06.14 更新金利格差より貿易摩擦「NZドル買い戻し」アメリカの中央銀行にあたるFRBは13日、政策金利の誘導目標を0.25%引き上げ、1.75 〜2.00%にすることを決めました。単純比較はで…
  • 2018.06.07 更新地政学リスクに敏感な豪ドル・NZドル「据え置き」オーストラリアの中央銀行にあたる準備銀行(RBA)は5日の会合で、オフィシャル・キャッシュレートと呼ばれる政策金利の誘導目標を過去最低の1.5%に据…
  • 2018.05.31 更新豪ドルの底みえた?「67%減」オーストラリアの主要メディアで、不動産価格の下落に関するニュースが目立って増えました。2大都市のシドニーとメルボルンの住宅価格の下げが特に目立つとし…
  • 2018.05.24 更新NZドルは売られすぎたか「冬到来」ニュージーランドの今朝のトップニュースは大雪でした。南半球のニュージーランドはこれから冬に向かいます。24日の朝は広い地域で気温が氷点下に下がりました…
  • 2018.05.17 更新投資家を悲観させたデータ「賃金が増えない」オーストラリア統計局が16日発表した第1四半期(1−3月)の賃金価格指数は、季節調整済みで前期比0.5%の上昇でした。前年比では2…

「週刊2分でわかる豪・NZ」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ