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2016/07/11 15:58高値目前の米株、次の試練

「最高値近づく」

先週のアメリカの株式相場は、EU離脱を決めたイギリスの国民投票後の不透明感から引き続きボラティリティが高い展開が続きました。ただ、8日に発表されたアメリカの6月の雇用統計を受け、大幅に上昇しました。

6月の雇用統計は重視される非農業部門の雇用者数の伸びが予想を大幅に上回りました。ただ、5月分の統計は下方修正されました。平均賃金の伸びがやや鈍化しましたが、全体的に上昇基調にあることが確認されました。アメリカの雇用は緩やかに伸び、賃金も増える傾向にある、ということを示す内容でした。ただ、 Brexit(イギリスのEU離脱)をめぐる不透明感、その影響への懸念もあり、FRBが早期に利上げできないだろうとウォール街は見ています。

FRBが利上げを先送り、しかも経済は先進国のどこよりも堅調。こうした見方を背景に、株式相場は近く最高値を更新するとみられています。S&P500は最高値目前。ダウは先週の終値は18146ドル。週間ベースで1.1%上昇しました。最高値まで約1%の水準です。ナスダックは先週、1.9%上昇しました。ウェルス・キャピタル・マネージメントのストラテジストは「楽観的な見方が広がっている」とCNBCにコメントしました。

「試練」

ただ、ニューヨーク株式相場の上昇基調が続くかどうかについて、ウォール街は自信を持てないでいます。

多くの株式ストラテジストが、ボラティリティが高い相場が続くとの見通しを示しています。CNBCによりますと、ゴールドマン・サックスの株式ストラテジストは、調整局面が近いと予想。BofAメリルリンチのストラテジストは、先週2129で取引を終えたS&P500が、年末には2000まで下がるだろうとコメントしました。

来週の株式市場では、10人近いFRB幹部が発言する機会があり、材料になりそうです。また、15日金曜日発表のアメリカの小売売上高、鉱工業生産、消費者物価指数、そして中国のGDPなどの経済指標も相場に影響することが予想されます。

最も相場に影響すると予想されるのが、来週から本格化する4−6月期の企業決算の発表です。11日月曜日のアルコアを皮切りに、来週は、JPモルガン・チェース、シティグループ、ウェルス・ファーゴなど大手銀行などが相次いで決算を発表します。アルコアは景気に敏感な素材株の代表、銀行はBrexitの影響が懸念されています。相場全体が上昇基調を維持できるかどうかの試練と言えます。

「政治リスク」

ウォール街関係者の週末の必読とされるBarron’sの11日号の表紙、巻頭記事は「ミューチュアル・ファンドの未来」でした。アメリカの株式市場のメジャー・プレイヤーで、1965年以降に平均年率13%で増加してきたファンドの預かりが去年以降、減少に転じたと伝えました。運用成績が振るわず、手数料の高さも嫌気され、解約が増えているとしています。手数料が低いファンド、運用が良好な一部のファンドへの資金移動が続きそうだと解説しました。

Barron’sはまた、日本円に換算して約10兆円を運用するロサンゼルス拠点のダブルライン・キャピタルのCEOのインタビューを掲載しました。

この中でCEOは、アメリカの11月の大統領選について、共和党のドナルド・トランプ氏が民主党のヒラリー・クリントン氏を破るだろうと予想しました。その結果、イギリスの国民投票後のような状況になる可能性があるとコメントしました。「トランプ大統領のもとで軍が増強され、メキシコとの国境に壁をつくるなど保護主義に傾き、アメリカの財政赤字が拡大する」とした上で、短期的に経済成長に影響するだろうとの見通しを示しました。ただ、人々が考えているより、怖い状況にはならないかもしれないとしています。


 [July 11, 2016 NY 006]

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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