岡村友哉の日経225ここだけの話

岡村友哉がお届けする一週間の予想レンジと市況情報。

2016/09/26 13:10焦点は日銀金融政策の見極め

日経225 現物指数 終値16754.02円(9月23日)
安値16399.65円(9月21日)/高値16823.63円(9月21日)


(日経225 日足チャート 25日線付)
(期間:2016/1/1~9/23)
 
(出所:Bloomberg)


(先週の振り返り)

敬老の日と秋分の日があり、立会い日数は3営業日だった先週。そのど真ん中21日(水)に日銀の金融政策決定会合、FOMCの結果公表が重なるスケジュールでした。その先週の週間高値、安値はともに21日に付けています。その差は日経225で424円。過去の日銀会合並みの値幅ではありましたが、今回はその“わかりにくさ”ではピカイチだったようにも思われます。方向性が読みづらくなってきました・・・。

 まず、週初20日(火)。総括的検証が行われる日銀会合を意識し、基本的には動きづらい状況でした。そのなかで、不透明なイベントを前に、手前で作ってきたポジションを一旦手仕舞う(買っていたものは売る、売っていたものは買う)といった動きが目に付きました。追加緩和があるならマイナス金利の深掘りになるとの報道から、事前に売られていた銀行株は一斉に買い戻される動き。また、日経225など指数についても、手前で売られていた分買い戻しも入っていた印象がありました。その前の週まで「マイナス金利深掘りアリ」がコンセンサスになっていたものの、直前にきて「総括的検証のみで、マイナス金利深掘りナシ」といった見方も台頭。コンセンサスが二分されたことも理由だったようです。

 日銀の金融政策決定会合の結果が出る21日(水)は、東京時間の開始直後まで前日の名残が継続。銀行株の買い戻し先行で始まりましたが、その動きもすぐに一巡。銀行株が売られ始めると、日銀待ちのムードが非常に高まります。午前中は日経225もTOPIXも前日比マイナスで終了。ただ、昼休み中にも結果の公表がなく、何か出るとの思惑から日経225はプラス圏に浮上します。ここで小さめでしたが乱高下を始める日経225・・・結果が出たのは今年の決定会合の結果判明時刻では一番遅い13時18分頃でした。

ここで流れたヘッドラインを、某ニュース端末ベースで紹介すると「日銀、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の導入を決定」→「日銀、マイナス金利0.1%を維持」→「日銀、ETF買い入れは年6兆円・REITは年900億円増を維持」→「日銀、イールドカーブ・コントロールを導入」→「日銀、長期金利ゼロ%程度で推移するよう国債買い入れ」→「日銀、物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで資金供給拡大継続」→「日銀検証、マイナス金利「国債買い入れとの組み合わせ有効」」・・・といった形でズラズラと流れてきます。今回、この時点でハプニングもありました。発表時間がいつもより遅いこともあり、日銀のホームページを見に行った市場参加者が多かったのでしょう。アクセス集中で日銀のHPを開くことができなくなり、市場参加者はヘッドラインでしか判断できない環境になっていました。

 まずは、一連のヘッドラインの中で、アルゴリズムは「マイナス金利0.1%を維持」の文言に反応したものと思われます。強烈に銀行株、保険株に買いが入ります。金融株の上げに押し上げられる格好で、日経225も押し上がったといえるでしょう。「株買い/債券売り/円売り」で初期反応を示します。長短金利操作のための新しいオペが導入されたことで、金融界に相当配慮したことが好感されたともいえます。その他では、前の週にブルームバーグだけが報じていたのですが、「ETFの銘柄別の買入限度にかかる見直しについて」といった決定事項もありました。「年間買入額5.7兆円のうち、3兆円については従来通り3指数に連動するETFの時価総額に概ね比例するよう買い入れる」としながらも、「10月以降、残りの2.7兆円についてはTOPIXに連動するETFを対象に買い入れる」としていました。これでTOPIX型の買入比率が大きく高まる一方、日経225型は大きく低下するため、個別では「ファーストリテイリング売り/メガバンクなどTOPIX型買い」の動きも発生しました。

 そのほか、発表直後の上げの中身には、総括的検証を出す日でも、粛々と日銀はルールにのっとってETF買いを発動していたことも含まれています。引け後にこの日も733億円の買入を実施していたと発表。つまり、ヘッドラインだけでは複雑で何だかわからないなか、マイナス金利深掘りナシに反応したアルゴが銀行株を強烈買い→それに引っ張られて指数も上昇→買い戻しが進む勢いに火に油を注ぐ日銀ETF買い、といった形で“オーバーシュート”した部分が株にはあったように思われます。

 その日の引け後の黒田日銀総裁会見から夜にかけて、日経225は先物で300円程度下落。続いて注目されたのが22日未明のFOMCですが、こちらは市場の大方の予想通り、政策の現状維持で決定しました。ボストン連銀総裁のローゼングレン氏など3名は即時利上げを主張し、反対票。声明文では、「景気見通しに対する短期的なリスクは概ねバランスしている」としながらも、「利上げの見通しは強化されたが、しばらくは目標に向けた進展が続いていることの更なるエビデンスを待つことを決めた」といった内容(声明文からはなぜ今回利上げを見送ったのか釈然としないとの声もありましたが・・・)。ただ、イエレン議長も今年はあと1回の利上げと発言するなど、12月利上げを確実視する向きは強まったようです。NY市場では、素直にリスクオンで反応。手前で弱気に傾いていた反動もあり米株は強めに買われ、長期金利も低下。ドル円は下落します(残ったのは円高だけ)。

 これを受けた週末23日は、円高を重石に輸出株が売り先行だったのと、前日に強烈に上げた銀行株が反動売りに押されたのが目立つ程度。日経225については、ボラティリティ・インデックスが急降下(21日終値21.27→23日安値18.85)しながら、今後もかなり遠い将来まで継続するであろう官製相場を意識したような動きに終始しました。大きなイベントを含む週でしたが、日経225は前の週の終値16519円を1%強上回る程度の水準で着地。25日移動平均(16715円)を少し上回る程度の水準で、結局は、いつも見慣れた値段でイベントを消化し終えたといえます。

 (今週の見通し)

  イベントは消化し終えたといっても、消化不良感が拭えないのが今回の日銀の新しい枠組みです。日経225の先行きも正直読みにくくなりました。新しい柱は①イールドカーブ・コントロール、②オーバーシュート型コミットメントです。単純にカタカナばかりで、市場にわかりやすく伝えたいというような意図が感じられないところがあります。

 俗に言われる政策の突っ込みどころを挙げるとすれば以下のようになります。まず、イールドカーブ・コントロール。イールドカーブのスティープ化を人工的に行う政策になるのですが、公言では10年債の金利「0%程度」を目標にするため“指値オペ”で釘付けしますとしています。長期金利のターゲットまで決めた踏み込み度合いには驚きもあったようですが、果たして上手く続けられるでしょうか?長期金利は中央銀行でコントロールできない、というこれまでの常識に挑戦するようです・・・。また、初期反応で為替は円高に振れましたが、金利だけでいえば「金融引き締め」にも見える話です。

 フォワードガイダンスを強化する目的で掲げたオーバーシュート型コミットメント。こちらの矛盾点は、安定的に2%のインフレが達成されるまで続けるとするなかで、金利ではなく「量」での対応を公言した点。何かあればマネタリーベースの拡大で対応するとしたのは、マーケットへの配慮といえるでしょう。ただ、総括的検証でこれまでの政策がうまくいかなかった理由が示されなかったなか、オーバーシュート型と言われても信憑性は伴いません。むしろ、永久的に金融緩和を続けるつもりなのか?という疑問が出るのが自然でしょう。とはいえ、長期戦になると思わせつつ、日銀は引き続き「できるだけ早く達成したい」ともしている・・・。腑に落ちないところは非常に多いわけです。

 これを日本株のメインプレーヤーである海外勢がどうとらえるでしょうか?取材した外資系証券のトレーダーは「第一印象は、買い入れの減額に向けた準備だと思った」と言っていました。ある米系大手証券のレポートでも、「将来のテーパリングに向けた布石を打ったのではないか?」と指摘しています。3年半続けた異次元緩和で効果を示せず、日銀を見切ったかのように売り越しを続けてきた外国人投資家。直後こそ、株は銀行株中心に買い戻しを進めましたが、ここからが評価の分岐点になると思われます。これを見極める必要がある・・・これが当面では最大の焦点になります。

 いくら、日系のバイサイドのストラテジストやアナリストが「評価できる」と日銀の新たな枠組みに言及したところで、日経225のここからの展開と関係ありません。海外勢が売り越し基調を続けるのか?売りを止めるのか?買いに転じるのか?を2~3週間のデータで確認しながら、海外勢がどう理解し、どう消化していくかを見極める必要があるといえます(東証の開示する投資主体別売買動向のデータなど)。

先週末に米国株の上昇も一服、利上げ見送りに伴う米国株のラリーも一旦止まった格好です。引き続きドル円や債券の動きにも目が離せないわけですが、今週は週初26日のアメリカ大統領選挙の第1回目のテレビ討論会がイベントとしては関心が高そうです(日本でも臨時国会召集がありますが・・・)。米国市場がトランプリスクをどのくらい意識し始めるか(意識度合いが高まれば基本的に株売り、ドル売り要因)を気にしておいたほうが良さそうです。

 日経225を取り巻く需給面でいえば、27日が9月配当分の権利付最終売買日、28日が権利落ち日となります。権利落ち分が日経225で「110円~120円」と試算されていますので、この分は日経225の低下要因になります。ただ、権利落ち日には「配当の再投資」という特殊な需給要因が発生します(配当込みTOPIXをベンチマークにするパッシブファンドが、配当落ちから実際に配当が振り込まれるまでの期間のトラッキングエラーを防ぐため、配当落ち分に相当するTOPIX先物を買うこと)。これがTOPIX先物にとって2000億円強の買い越し要因になり、配当落ち分は意外に吸収することが多いです。

一方、現在の日本株の最大の買い手は、単体としては「日銀(ETF買い)」ですが、集合体としては自社株買い(事業法人)です。その自社株買いは、決算日の5営業日前から自粛期間に入るというルールがあります。今週26日以降、決算発表までの期間は自社株買いが入らなくなる・・・この分は需給的にはマイナスとカウントしておく必要がありそうです。今週は上値重めを想定、一方で日銀ETF買いや配当再投資の存在で下値も大崩れはしにくいというシナリオを軸に、想定レンジは16350円~16800円とします。

なお、10月3日、11日配信分の本レポートにつきまして、筆者都合により休載させていただきます。大変申し訳ありませんが、何卒ご容赦ください。

(おしまい)
 

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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