岡村友哉の日経225ここだけの話

岡村友哉がお届けする一週間の予想レンジと市況情報。

2016/09/12 15:37米9月利上げに対するトーンと米株次第

日経225 現物指数 終値16965.76円(9月9日)
安値16836.65円(9月8日)/高値17156.36円(9月5日)


(日経225 日足チャート 25日線付)
期間:2016/1/1~9/9
 
(出所:Bloomberg)

(先週の振り返り)

米雇用統計後にドル円が上昇したことから、週初の日経225は強く始まります。寄り付きから節目の17000円を突破してスタート。6月1日以来3カ月ぶりの17000円台ということで、ついにトレンドが転換したか?とも思わせるような雰囲気で始まったといえます。ただ、先週のレポートで触れましたが、「雇用統計後の違和感のあるドル買い(104円台乗せ)の動きは、レーバーデーを含めた3連休前に短期筋によるポジション整理の要因も大きかったのでは?」という疑問・・・これが現実のようでした。ドル円の上昇が続かず、日経225も週初5日に週間高値を付け、その後は軟調な動きに終始する1週間でした。


週の前半5日(月)、6日(火)は、レーバーデーによる海外勢の不在ぶりが見るだけでわかるレベルで・・・東証1部の現物市場の売買代金は連日1兆7000億円前後でした。先物プレーヤーも、週末のメジャーSQの前にロールオーバー(9月限→12月限)を進めるタイミングです。値動きとしては薄商いだったのですが、そのなかで5日午後の上げ幅を縮めた場面が目立ちました。この日11時半から、共同通信社の「きさらぎ会」で黒田日銀総裁の講演が予定されていました。この場で黒田総裁は、9月会合で予定されている総括的な検証について、「市場の一部でいわれているような緩和縮小という方向の議論ではありません」と発言。日銀のHPに掲載された講演原稿の中身も市場で広まるにつれ、日経225もドル円も上げ幅を縮める動きになりました。

上がった目線をまた少し下げざるを得ないような変化が起きたのが7日(水)。前の日の夜発表された米ISM非製造業景況感指数が、市場予想の55を大きく下回る51.4という極めて弱い数字に。前の週のISM製造業景況感指数に続く弱い経済指標を受け、9月利上げは難しいだろうとの見方でドル円がまた102円割れまで急落。米10年債利回りも1.5%台という見慣れた水準にUターンで戻ってきます。9月利上げの可能性が浮上したきっかけは、8月26日のジャクソンホール。9月利上げの可能性消滅であるとすれば、直前の100円台半ば辺りまでドル円の下値は見えてきます。そうなると、日経225でいえば16300円台まで見えてくるともいえるわけですが・・・。

 ただ、これだけ為替が円高に振れながら、7日の日経225は予想外の底堅さを示します。前日の東京時間に比べてドル円は「2円以上も円高」になっていたのですが、朝から16900円台で踏みとどまる展開。前日比で1%弱の下げでとどまった背景は、日銀ETF買い発動の存在感としか言いようがなかったですね。今日は確実に発動するとの意識から、あまり下げていないと思った投資家も前場は売りを躊躇するし、実際に発動する後場も当然躊躇してしまう・・・。結局、午後に下げ幅を急速に縮め、日経225は69円安で終了します。「ドル円が1円動くと日経225は200円~300円動く」という相場感覚が培われてきたと思われますが、この日は「2円以上も円高になりながら、日経225は69円安で終わる」という理解しにくい1日に・・・まさに日銀が支配した1日だったようにみえます。この日は実際ETFの買い入れを行い、9月に月が替わったこともあり、1回当たりの買入額は8月分(707億円)から26億円増額した「733億円」でした。9月いっぱいはこの「733億円買い」が1回当たりの買い入れ額になります。

 8日(木)も17000円をやや下回るレベルで値動きは止まっていたのですが、この日は13時半から始まった日銀の中曽副総裁の講演をきっかけに一回大きく崩れる場面も(ここで付けた安値が日経225の週間安値)。「マイナス金利が金融機関に与える影響は、日本は相対的には大きい」といった発言をしたとのヘッドラインに反応したようですが、結局、このリアクションも一時的。大引けに向けてV字型でリターンを果たしており、何となくですが、日銀の主要関係者の講演があるときは「円買い/日経225先物売り」でファーストアクションを起こすことを決めているアルゴリズムでもあるのではないか?という感じもあります(あくまで想像ですが・・・)。

 週末9日(金)は9月限のメジャーSQでした(SQ値は17011円)。
特段理由があったようには思えませんが(ECB理事会で政策の現状維持が決まり、QEの期限延長が見送られたことによる欧州の金利上昇に連動?)、前日にアメリカの長期金利が9月2日以来の1.6%台まで上昇。Fedウォッチツールの9月の利上げ確率が15%→21%に上昇していました。これを受けてドル円が102円台を回復したことがフォローにはなりました。この日、午前中はやや軟調だった日経225ですが、東証の現物市場の前場が終わる11時半。この直後から、なぜか日経225先物が上昇し始めます。安倍総理と黒田日銀総裁が緊急的に会談するとの報道から思惑が広がったのか?それとも前場のTOPIXが0.31%安ということで、日銀ETF買い発動を意識してフライング気味に買い向かった短期筋がいたのか・・・。実際、日銀のETF買い733億円が発動されていたと引け後に公表されており、日銀の需給面のインパクトがこの日も下支えに一役買ったといえそうです。

 (今週の見通し)

 先週末9日のNY時間、“世界同時リスクオフ”の広がりに備え始めたような展開になりました。この日、ハト派のボストン連銀ローゼングレン総裁が講演の場で「遅すぎる利上げはリスク」との見方を示します。これが9月利上げの確率を高める(Fedウォッチツールの9月利上げ確率は18%→24%)手掛かりとなり、ドル円は一時103円台に上昇(米長期金利も1.68%台に上昇、ジャクソンホール直後の1.63%を突破)するのですが、その勢いを凌駕する「米株売り」で市場は反応します。NYダウは394ドル安と、最近2カ月見なかった急落を見せます。この時間帯で取引されていた主な株式市場は、この米株安に連動します。

※9月9日の各国株価指数の騰落率
NYダウ▲2.13%、NASDAQ▲2.53%、S&P500▲2.45%
ブラジル▲3.70%、アルゼンチン▲2.93%、メキシコ▲2.01%、カナダ▲1.77%

 リスクオフを予想する人が増える過程で、真っ先に売られるものはリスク資産でしかない株です。9月利上げ自体をそもそもあまり市場は織り込んでいなかったわけですが、それに伴う株価の下落もあまり織り込んでいなかった・・・それが先週末から起きているリスクオフの要因で、市場は短時間でこれに備えようとしているわけです。米株が売られると、他の新興国株が売られます。また、ブラジルレアルなど高金利通貨も売られ、ハイイールド債も売られます。

 週明けの日経225は、まずは世界同時リスクオフの兆しを察知して水準を切り下げます。もちろん、先週凄まじい威力を発揮した日銀ETF買いの存在は継続。本来下げるべき下落分を無駄に抑える役割は果たすでしょう。とはいえ、忘れてはいけないことは、日本株=世界の景気敏感株ということ。日本株は恐ろしいほどリスクオフに弱く、これは今年1月からの下げ相場で嫌というほど見た光景です。

 割高と指摘されながらも、高値圏を維持してきた米国株。ただ、恐怖指数のVIX指数は、先週末の急落前日(9月8日)まで、「12」程度の超低水準を保ってきました(株に対する不安が異常に乏しい状態)。実際、9月8日時点のVIXの25日移動平均は12.33です。これが、9月利上げの急ピッチの織り込みに迫られた9日には17.5と、1日で約4割も跳ね上がっています。過去の事例では、急激にVIXが跳ね上がるとき、17台という中途半端な水準でピークを打ってしまうケースは少ないです。20~25程度に跳ね上がることが事例としては多く、今回も同様のリスクを想定しておくべきです。それだけ、世界の投資家は、株のロングポジションを持ちすぎていることの裏返し。今週末は米国市場のSQですが、ここに向けてもう1発くらい米株の大きな下げが起きる(=VIXが上がる)可能性は無視できません。

もちろん、この動きが短期的に収束する可能性もあります。9月利上げの確率が上がったという点では、12日(日本時間13日深夜2時過ぎ)にハト派の大物であるブレイナードFRB理事の講演があります(先週急きょ開かれることが決まりました)。FOMCまで1週間に迫ると、FRBメンバーは金融政策に関する公式発言の自粛期間(ブラックアウト期間)に入ります。その直前でのブレイナードFRB理事の発言が、思いもかけずタカ派的な内容になるとすれば、9月利上げへの準備(米株売りなどリスクオフの形)が一層加速するでしょう。そうでなければ、一旦は米株の買戻しにつながることでしょう。

 こうした疑心暗鬼にならざるを得ないタイミングになってしまった今週。日経225は25日線を割り込むかどうか、とかそうした注目ポイントを耳にしますが、まったく関係ないでしょう。9月利上げに対するトーン次第、米株次第であって、事前に戦略を立てられる類のものではありません。21日までトレードしないのが得策ともいえるタイミングです。想定レンジもワイドになってしまいますが、16200円~17000円とします。VIXが20に迫るような展開になるなら、日銀ETF買いも焼け石に水。東京時間内の押し目買い戦略は見送りたい週です。

(おしまい)

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

バックナンバー

「岡村友哉の日経225ここだけの話」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

株価指数CFDをご検討の方へ マネースクエアはあなたの資産運用のパートナーとして、革新的なアイデアを提供し続けます。
各種取引ツール M2J株価指数CFDでご利用いただく取引ツールについてご案内します。 各種トレードツール
ページトップへ