岡村友哉の日経225ここだけの話

岡村友哉がお届けする一週間の予想レンジと市況情報。

2016/11/14 15:16マーケットに芽生えた

日経225 現物指数 終値17374.79円(11月11日)
安値16111.81円(11月9日)/高値17621.73円(11月11日)


(日経225 日足チャート 25日線付)
(期間:2016/1/1~11/14)
 
(出所:Bloomberg)


(先週の振り返り)

 1年に及ぶ米大統領選挙が決着した先週。トランプ勝利の「想定外」と、トランプ勝利後にリスクオンという「想定外」でマーケットは大荒れになりました。壮絶な“行って来い”相場になった日経225。Xデーだった11月9日の日経225先物の日中値幅は、Breitの6月24日に次ぐ今年2番目の「1360円」。荒れるかもしれないと警戒されていましたが、直前で緊張が緩んでいたことも理由でしょうか・・・本当に荒れました。

 週初は、大統領選を前に、直前で高まっていたトランプリスク後退を織り込む動きが進みました。「私用メール問題でクリントン氏を訴追しないとの結論に変わりはない」とFBI長官が米議会への書簡で伝えたと報じられ、ドル円は一気に104円台半ばまで急伸。前の週に売りヘッジ(16000円プットなどアウトのプット買いなど)をしていた投資家がデルタヘッジの日経225買いに回るといった動きから、朝一番で17170円まで急伸。そこから、大統領選挙の前日(8日)まで17060円~17280円のレンジでもみ合い(様子見)商状になりました。水準としては、トランプリスクが浮上する前の水準に戻し、大統領選挙を迎えるといった形に。

 そして迎えた9日(水)。民主党候補ヒラリー氏が優勢を保ったまま迎えたとはいえ、開票速報を最初に反映できる日本株市場。直前の世論調査で、激戦州はどこか、激戦州でどちらが優位かといった傾向は伝わっており、トレーダーの多くが9時締め切りの大票田フロリダ、ジョージア、9時30分締め切りのノースカロライナ、オハイオ、10時のペンシルバニアなどの開票速報を注視。このほとんど全てをトランプが取らなければ、早々と「クリントン勝利=リスクオン(円売り/株買い)」が加速する・・・多くの市場参加者が、どこからクリントンラリーで円安/株高に反応し始めるか?に関心を示していた事実もありました。実際、アルゴリズム取引のプログラムは「クリントン優勢=(日経225先物)買い」「トランプ優勢=売り」で組まれていました。

それを反映するように、開票速報が流れるたびに乱高下し始めます(ほとんどの投資家が様子見のなか、機械が開票結果だけで売り買いを繰り返す)。いつも以上に流動性が低い状態で、機械がデリバティブ経由で指数に力を加える・・・クリントン優勢ならリスクオン、トランプ優勢ならリスクオフ。EU残留ならリスクオン、離脱ならリスクオフでアルゴが暴走した英国の国民投票のときと同じ構造です。

 当日の細かい動きは割愛しますが、クリントン有利と見られていた大票田フロリダ州でトランプが善戦していると伝わると、極度に日経225が売られ始めたのが最初の波乱。そこから開票速報でトランプ有利が明らかになるにつれ、(そもそもほとんどの参加者が様子見だったため)アルゴ発の日経225売りで値崩れが加速。そこで16000円プット買いの商いも急激に膨らみ、デリバティブの力でまたしても価格破壊が起きました。そして、このときも低確率のほうで決着が付いたと市場が確信したタイミングは東証の現物市場の昼休み時間でした。先物主導で崩れても裁定取引も入りようがなく、Brexitのときと同じく後場の現物株は売り気配一色でした。Brexitの教訓から、こういった暴落で付いたミスプライスには、買い向かう参加者も後場は出ていたようですが、結局この日、日中高値17450円から日中安値16090円までの値幅が生まれました。

また、日経225先物の売買高は26.8万枚に急増(その前日は3.3万枚)。これは、日経225先物だけで4.5兆円規模の売買代金だったことに相当します。東証1部全銘柄の売買代金は3.9兆円まで膨らみましたが、それでも日経225先物より商いは少なかった・・・ここからも、先物などデリバティブで日経225は値段が決まっていることが明らかだと思います。そして、それをやっている大半がアルゴリズムを使う短期筋(とこの日の出来高のほぼ半分がABNアムロ1社の手口でした)。つまり、こういった一大イベントのときに出来高が急増して付けた値段というのは、あまり意味がないともいえます。この日の日経225先物の終値は、前日比950円安の16250円。

さらにサプライズとなったのが、トランプ大統領誕生を受けた欧米時間での強烈リスクオンでした。アジア時間にminiダウ先物で17418ドルまで下げていたのですが、トランプ勝利で政策の恩恵を受ける銀行、ヘルスケア、インフラ関連株に買いが膨らみ始めると、これを投資家は“トランプラリー”と呼び始めます。トランプ氏の別人のような勝利演説がショートカバーを誘ったともみられますが、米国債利回りが急上昇(30年債は過去5年で最大の上昇)。長期金利上昇とドッド・フランク法の撤廃など規制緩和への期待からMSやGS、シティ、ウェルズファーゴなどが軒並み急騰しました。東京時間に暴落した日経225先物も夜間取引で急上昇に転じます。

まさかのトランプラリーを受け、10日(木)の日経225は17250円と前日比ジャスト1000円高でスタート。ここまでギャップアップしたのは、金融危機のあった2008年を除けば最大です。前日にプレミアムが205円まで急騰した16000円プットは、朝から1円に暴落。10月SQの前日にして、16000円まで下がる芽は完全に消え、商いが殺到した同オプションは無価値になります。水準としては、選挙前の値段にUターンした日経225。この勢いがNY市場で2日間続き、日本でも米国の長期金利上昇に反応し、個別で保険株や銀行株、インフラ株などトランプ関連銘柄探しに発展。週末こそ一旦利食い売りに回る投資家も多かった感じでしたが、長期金利の上昇によりドル円が新しいレンジに移行することへの期待が確実に芽生えています。


 (今週の見通し)

 「トランプ勝利→円高/株安」という多くの市場参加者が描いていたシナリオが全否定されました。そのため、先週10日の寄り付きで日経225が1000円上がる前、1回急落しました。その後に急騰。日本は開票速報で1回急落したことで、市場に大きな“変化”が起きたように思われます。

 それまでの日経225は、基本的には需給を日銀(のETF買い)に決められていました。それがボラティリティを潰していた相場だったのですが、想定外のトランプ勝利とトランプ後のリスクオンにより、死んでいた相場が復活しました。1回急落したことで投げ(売り)が出て(需給のシコリがほぐれる)、その売りが新しい資金にもなります。Brexitの教訓から、急落場面を逆張りで買い向かった投資家も生まれます。もちろん、想定外の大きなリバウンドを見て、「戻し過ぎだろう」といった判断で新規のショートも生まれる・・・こういうことがトランプラリーの前は本当に無くなっていました(だから売買が少なかった)。

 今回、「1回急落」という日本だけで生じた誤った動きがあったおかげで、「相場が動かなくなったから何もしない」となっていた投資家の資金を呼び戻す効果が生まれたように思われます。事実、何をやっても増えなかった(減る一方だった)東証1部の売買代金が急増。急騰した10日(木)は買い戻しも巻き込んで3.4兆円とし、11日(金)も3.6兆円と大商いになったことは買い戻しで片付けられない動きといえます。その点では今年の他の大幅高局面とは違うところです。そして、ここで買われたのがメガバンクであり、ダントツがモルガンスタンレーを持分法関連会社に持つ三菱UFJだったということ(今年最大の出来高)。明らかに意思を持った買いが入っているように見えます(おそらく外国人買い)。

 トランプ大統領の誕生なんて悪夢だ、と米市場では事前に言われていました。でも、誕生当日からアメリカ市場では債券が売られ、株が買われました(とくに銀行株や薬品株など典型的な共和党セクター)。なんといっても米金利が2%を超えるレベルに急伸したことが大きかった・・・トランプ政権が大減税し、財政拡大路線に切り換えることで景気が上向くんじゃないか?なる“希望”が出てきたと解釈できる反応です。

 この動きを「楽観し過ぎ」「いいとこ取りし過ぎ」といった声も挙がっていますが、投資家はそんな風ではないようです。JPモルガンによれば、トランプ勝利から3日間で220億ドル(約2.3兆円)も米株ETFに資金が流入したといいます(NYダウは先週、過去最大の959ドル高)。そもそも低金利で行き場を失っていた資金が、新興国売りと同時に米国買いに回ったわけです。アメリカがトランプラリーだからといって、「保護主義的な政策は日本にデメリット、日本もトランプラリーに便乗するのはおかしい」という見方もできます。ただ、日本は悲しいかな、フローの中心は海外投資家です。その海外投資家が自国でリスクオンに動いている間は、フローの方向性は日本もリスクオンになるのは必然のように思えます。

株というのは「期待で買われ、現実で売られる」ものです。トランプ政権後の景気刺激策への“期待”が支配しているうちは、日経225はバイ&ホールドが優位としか言い様がありません。17日に安倍首相がトランプ氏と会談する予定ですので、そこまでは「何だか上がり過ぎているから」といった理由でショートするのは危険といえるでしょう。今週の日経225の想定レンジは17200円~18000円とします。マーケットに人が戻ってきたのは、「期待」が芽生えたから。これまでの想定レンジは捨て、今後1カ月のレンジを17000円~18400円に大きく引き上げます。米金利がどこまで上がるか次第(日本の長期金利はゼロがターゲットのため動きようがない)、つまりはドル円がどこまで上がるか次第。金利上昇(ドル高)に米株がどこまで耐えられるか(上がるか)次第。そして、海外投資家の投資行動がどこまで続くか次第。とはいえ、日銀に支配され、死に体のようになっていた市場よりよっぽどマシ!この動きが長期的に続く「かもしれない」、そんな期待というか“希望”が芽生えた段階が今ですね。

(おしまい)

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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