岡村友哉の日経225ここだけの話

岡村友哉がお届けする一週間の予想レンジと市況情報。

2016/11/07 16:25注目の米大統領選挙!ダウンサイドリスクに注意?!

日経225 現物指数 終値16905.36円(11月4日)
安値16801.98円(11月4日)/高値17473.12円(11月1日)

(日経225 日足チャート 25日線付)
(期間:2016/1/1~11/4)
 
(出所:Bloomberg)

(先週の振り返り)

 トランプ大統領が誕生したら・・・いわゆる“もしトラ”に対する危機感が、週末にかけて加速度的に高まった1週間でした。前の週の週末、民主党候補のヒラリー・クリントン氏に対し、国務長官時代の私用メール問題でFBIの捜査再開をメディアが一斉に報じていました。週初31日(月)の時点でわかっていたリスクです。ただ・・・、週初31日、月が替わった11月1日(火)まで市場が深刻に受け止めていないようだったことも事実でした。


 実際、先週の日経225の高値は1日の17473円。この日は、日銀金融政策決定会合の結果が判明する日でもありました。追加緩和の期待は無かったものの、結果判明の手前で日経225は朝の下げ幅を縮める動きを見せます。釈然としない理由といえますが、10月の中国製造業PMIが市場予想を上回る強い数字だったから、と市場では言われていました。この時間帯、GLOBEXの時間外取引で米株先物が上げ幅を広げていることにも連動した格好。その流れのなかで、日銀の「現状維持」の結果を市場は確認します。

 この後に前述の週間高値17473円を付けにいくわけですが、その理由も「声明文で長短金利操作のなかに80兆円の文言が残っていたことに安心感が出た」など、後講釈のような解釈が多かった感じではありました。ただ、実際は、午後の指数を安定させたのは、日銀による707億円のETF買いだったこともその後判明。ここまでは先週までの流れ通りだったように思われます。ちなみに、黒田日銀総裁の会見で「ETF買いは市場を歪めるのでは?」との質問がありましたが、黒田総裁は「歪められているということはない」「東証の時価総額は500兆円を超えているため、ETFを年間6兆円買う程度では全体に歪みが出ることはない」と持論を展開・・・。

 ただ、日銀ETF買いで値段を保った1日の時点で、気になる先物手口も出ていました。TOPIX先物サイドで、ゴールドマン・サックス証券(以下:GS)が売り5618枚に対し、買い1072枚で差引4546枚の売り越しでした(一手売り状態)。GSの手口には逆らうな、といった発想は昔からよく知られています。その直後の1日夜、海外時間でトランプリスクに対して非常にナーバスな展開に転じます・・・。この日、米VIX指数が一時20の大台を超えます。これは、前日にNYダウが394ドル安した9月12日以来の高水準。トランプリスクのメルクマールとされている「メキシコペソ」(トランプ氏が、「大統領になったらメキシコとの国境に壁を作る」と宣言しているため)が急落。有権者に対する世論調査で、トランプ氏の支持率がクリントン氏を1ポイント上回ったところも出てきたなどと報じられたことが引き金になったとされます。

 ギャップダウンで始まった2日(水)の日経225は、東京時間に下げ幅を広げる展開になります。「朝下げたら、午後は日銀ETF買いが入るから大丈夫」なる日銀神話に包まれている日本株市場とはいえ、それも万能薬では無いことを改めて確認させられた1日でした(実際、この日は706億円のETF買いが入っていた)。この日の東京時間で起きていたことは、トランプリスクに対して急ピッチの対応を迫られた海外ヘッジファンド、そして国内機関投資家の“ヘッジ売り”で説明がつきます。

 この日、日経平均VIが一時23台まで急騰しました。VIの上昇は、オプションを買う人が増えることにより生じます。一般的にVIが上昇するときは、日経225が大きく下落しているときです。その理由は、多くの国内機関投資家が日本株ロングのポジションを持っているため(日本株ショートのフルバスケットで運用している機関投資家はほぼ皆無)。そのため、今回のようなトランプリスクで「リスクオフの円高で日経225も下落するかもしれない」という話になると、そのヘッジは「プットの買い」となります。手持ちの日本株を売るほどでもないリスクに向き合うとき、低コストでヘッジがかけられるのがオプションになります。実際、この日はアット・ザ・マネー(17125円)より権利行使価格が下の「16500円プット」や「16000円プット」が出来高を膨らませていました。オプションの手口を見ると、16500円プットでは野村證券が1344枚買い越しでしたので、国内機関投資家のヘッジ売りで間違いないと推測されます。


 これが週末にかけた日経225下落の理由です。しかも、2日は翌日3日(木)が祝日でお休み、4日(金)も夜に米雇用統計の発表も控えますが、土日が休み。その間にトランプ氏の支持率の上昇が起きる危険は十分あるわけで、日経225の下げに備える必要性がより強まったのだと思われます。週末4日に関しても、その前日にS&P500が8日続落(2008年以来で最長のようです)とか、リスク資産の新興国株(ブラジルなど)の目立つ下落や、ハイイールド債の下げも確認されたわけです。明らかに「リスク回避継続」としか言えない形で返ってきていたわけで、2日と同じ投資行動をとる国内機関投資家が多かったように思われます。この日は、さらにアウトの「15500円プット」の買いも膨らみ、日経平均VIは一時26まで大幅続伸しました。

 (今週の見通し)

先週末発表された10月分の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が16.1万人増と、17万人程度を見ていた市場予想をやや下回る数字でした。ただ、12月利上げに影響を与えない程度の堅調な数字との見方からか、いつになく雇用統計は無風の通過。そのなかで、引き続きS&P500は超小幅ではありますが、この日も下落。S&P500の9営業日続落というのは36年ぶりの現象だそうです。この日も、雇用統計よりトランプリスクが勝っていたとはいえそうですが、確率が高いのは未だクリントン大統領誕生。トランプリスクへの対応だけで株が下げ続けるとは思えず、クリントン大統領誕生の先(金融規制の強化や富裕層増税、薬価引き下げなど)を考えた長期投資家の株式ウエイトを落とす動きにも思われます。「クリントン勝利ならリスクオン、トランプ勝利ならリスクオフ」で短期的には反応するのでしょうが、短期のトレードをするヘッジファンドだけで市場は構成されているわけではありません。この辺りは冷静に考える必要がありそうです。

 さて、市場が最大のイベントに位置付ける大統領選挙まであと2日というタイミング(東京時間の7日の早朝5時50分ごろ)で、先週までの“もしトラ”対応が否定されるような報道が出ました。そもそもの事の発端がFBIの再捜査だったわけですが、「私用メール問題でクリントン氏を訴追しないとの結論に変わりはない」とFBI長官が米議会への書簡で伝えたと・・・。参加者の少ない時間帯に報道が出たこともあり、ドル円は一気に104円半ばまで急伸。これを受けて、週明けの日経225も先週後半に起きたことの逆流から始まりそうです。トランプリスクに対するヘッジで、16000円や16500円のプットを買っていた投資家のヘッジ外し(プット売り、もしくはデルタ分の日経225先物買い)が急いで行われます(取引している人は少ないですがメキシコペソは買われる)。突然出てきた“もしトラ”で下げた分は、簡単に戻るという側面も持ち合わせているわけです。

 この動きが一巡したあとは、完全に大統領選挙待ちモードでしょう。訴追の可能性が消えたとはいえ、もはや“もしトラ”が低確率とは言えなくなっているのも事実。政治情報サイトのリアルクリア・ポリティクスでは、6日時点の支持率はクリントン44.9%、トランプ42.7%と差は縮まっています。日本時間で9日(水)昼ごろから夜にかけて結果が判明すると見られますが、開票結果の変遷に反応しそうなアルゴリズムの動きに付き合う必要はないでしょう(リスクとリターンが見合わないため)。


 短期的には、クリントン勝利ならリスクオンでドル円が上昇(少なくとも10月高値105円52銭を超える?)、トランプ勝利ならリスクオフでドル円が下落(最大でも9月安値100円程度まで?)で反応し、それぞれ前者なら日経225上昇要因、後者なら下落要因になると見込まれます。これは多くの市場参加者の総意でしょうから、アルゴが初期反応で力をかける方向もそうなるはずです。為替の上下イメージをこの水準に置くなら、日経225の想定レンジは16300円~17600円くらいを見ておく必要がありそうです。現在の17000円台でその時を迎えるとすれば、アップサイドよりダウンサイドリスクのほうが大きいと言えるでしょう(先週起きたことと同じで、日経平均VIが急騰するのはプット買い=日経225売り、が理由になるため)。

 選挙後の相場展開はイメージしづらいところがありますが、確率の低いほう(トランプ勝利→Brexitと同じような日経225急落)で決着した場合には、リバウンド狙いも面白そうです。ただ、その先の議論は、初期反応が示すであろうマーケットの方向性で正しいのか?というところに変化するはず。本当にクリントン大統領誕生で円安基調になるのか?日本株を外国人がまた買い始めるのか?・・・個人的には楽観し過ぎているようにも思われますね。今後1カ月のレンジは、16300円~17700円程度とします。下限のみトランプリスクを考慮して前週より引き下げました。

(おしまい)

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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