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失業増でも上がる米株相場、下がらない不動産

2020/05/11 10:21

「高いバリュエーション」

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、トランプ大統領が国家非常事態を宣言して以降、アメリカで3300万人以上が失業しました。4月の雇用統計の失業率は14.7%に悪化。実際の失業率は20%近くに達した可能性があるとの見方をアメリカ労働省は示しました。ムニューシン財務長官は10日、FOXニュースの番組で、「労働市場はさらに悪化する。失業率は25%に上昇する可能性がある」と述べました。

労働市場は深刻、製造業とサービス業の景況感は急低下、消費者の信頼感は大幅に悪化したにも関わらず、アメリカの株式市場は楽観ムードにあふれています。

ダウ工業株30種平均は前週比で608ポイント、率にして2.6%高の2万4331ドルで先週の取引を終えました。S&P500株価指数は3.5%高の2930。テクノロジー株が積極的に買われナスダック総合株価指数は先週末より6%高い9121で引けました。ナスダックは3月の安値から2500ポイント(38%)近く上昇し、年初の水準を上回りました。

ジョンズ・ホプキンス大学のまとめでは、新型コロナウイルスのアメリカ国内の感染者は10日時点で132万人。死者は7万9千人。増加ペースが鈍化したといっても、まだ1日あたり2万人以上が新たに感染し、約4千人が死亡しています。状況を考えると、株式相場の上昇が不思議に思えます。

バロンズ紙によりますと、S&P500企業の2020年の業績見通しで計算した1株あたり利益は平均で128ドル。年初の152ドルから下がりました。株価収益率(PER)は23倍。最も悲観的な見通しで計算すると30倍近くになります。2000年代初めの「ドット・コム・バブル」に匹敵する高さ。バリューションが割高になっているとバロンズは指摘しました。

ウォール街は懸念していません。連邦準備理事会(FRB)が大量に資金を供給していることが背景。ナスダック指数は年初水準を超えたといっても、ナスダック上場企業の約75%が年初水準を下回ったまま。アップルやアマゾンなどのFANGとマイクロソフトなど一部の企業が大幅に上昇したことが指数を押し上げています。ナスダック総合株価指数とS&P500株価指数は時価総額が高い銘柄の寄与度が大きい。バリュエーションでも一部銘柄の極端な高さが影響しています。つまり、全体的には割高ではないとみられているということです。

「FRBと小売売上高」

11日の週のアメリカの株式市場では、FRBのパウエル議長が材料になりそうです。13日に発言する機会があります。マイナス金利導入の可能性が指摘されていますが、パウエル議長はどう発言するか。経済指標では15日発表の小売売上高が注目されそう。

決算発表も続きます。大型ショッピング・モールを展開するサイモン・プロパティ、カジノ運営のシザーズ・エンターテインメント、IT大手のシスコシステムズ、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズなどが四半期決算を発表します。経済活動の一部が再開された後の見通しが焦点になります。

CNBCは、ストラテジストの多くが不安定な相場展開が続くと予想していると伝えました。新型コロナウイルスをめぐるニュース、経済活動再開の動きが引き続き注目されているとしています。

「下がらない米不動産」

「失業しローンを滞納するアメリカ人が急増。住宅価格は大きく下がる」と不動産関係者の一部はみています。しかし、予想されたほど下がらない可能性があります。

バロンズの最新号の表紙と巻頭記事は、「パンデミックの中で住宅価格が保たれているのはなぜか」でした。過去の景気後退では80%超の確率で住宅価格は下落したが、4月末時点で不動産価格は平均で1%上昇したとしています。

在庫が少ない中で新築物件の工事が止まっていること、外出を控えている買い手が遅れて物件を探す可能性があること、連邦政府と州政府が住宅ローンの不良債権化を抑える策を積極的に導入したこと、金融危機時と異なり住宅価格がバブル化していないことなどが背景だとバロンズが指摘しました。

大手不動産情報サイトのジローは、アメリカの今年の不動産価格は2~3%の下落にとどまると予想しました。長期的には7200万人のミレニアル世代が住宅を新規購入する可能性があり、不動産価格を下支えするとしています。

[May 10, 2020 NY202]

※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。

筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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