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景気後退リスクの思惑錯綜、テーマはシフト

2019/10/07 11:11


「懸念が一服」
市場の空は依然として「グレー(灰色)」。バロンズが先週の株式市場をこう表現しました。市場をとりまく世界がカラフルな色から白黒になったとしています。
先週のニューヨーク株式市場のテーマはアメリカ経済でした。中国が国慶節の連休だったため、国内の経済指標に注目が集まりました。

先行指標としてウォール街が重視するアメリカ供給管理協会(ISM)の製造業景況感指数が10年ぶりの低水準を記録しました。「一人勝ち」とされたアメリカの経済がリセッション(景気後退)入りするとの懸念が一気に高まりました。

米中貿易戦争の影響で製造業が弱いものの、個人消費とサービス業は堅調。市場はこう総括してきました。このため、ISMの非製造業つまりサービス業の景況感指数がいつになく注目されました。結果は予想を下振れ。低迷がサービス業に波及したとの懸念が強まりました。ただ同時に、FRBが今月の会合で追加利下げに動くとの観測が広がる結果になりました。利下げ観測が株価を支え、2日続いた大幅安から反発しました。

そして4日の雇用統計。個人消費を支えているのは労働市場が堅調だからとされています。景気に敏感な非農業部門の就業者数と賃金の伸びが予想に届きませんでした。一方で、失業率が3.5%と、1969年以来の低水準に改善しました。強弱感が入り混じる内容。市場の一部で懸念されたほど弱くありませんでした。「結局、アメリカ経済は後退しない」との安堵感が広がり、株価が大幅に上昇しました。

ダウは1日と2日の2日間で800ポイント超下げましたが、結局、前週比で246.3ポイント(0.9%)安の2万6573.72で先週の取引を終えました。S&P500は週間ベースで0.3%安の2952.01。一方、テクノロジー株の寄与度が大きいナスダックは0.5%上昇し、7982.47で引けました。

「米中とパウエル議長」
今週のアメリカ株式市場では、景気後退リスクが一旦材料から外れ、テーマが米中貿易戦争の行方に移ると指摘されています。

連休が明けた中国の劉鶴副首相らが10日に訪米、アメリカ通商代表部(USTR)のライトハイザー代表とムニューシン財務長官との対面での閣僚級協議をワシントンで再開します。期待値は低いものの、両政府筋を情報源としたニュースが相場を動かすと予想されます。

もう1つ材料になりそうなのがFRBのパウエル議長。8日、9日と連続で発言する機会があります。製造業とサービス業の弱い景況感、強弱感入り混じる雇用統計を受けどう発言するか。9日には前回会合(FOMC)の議事録が公表されます。

CMEグループのフェドウォッチは、FRBが今月会合で0.25%利下げする確率が80%あることを示唆しています。1週間前の確率は50%程度でした。パウエル議長が利下げを示唆すれば株価にポジティブ、利下げに慎重な姿勢を示した場合はネガティブに影響する可能性があります。

「ウクライナ疑惑」
トランプ大統領が、軍事支援の見返りとして政敵のバイデン前副大統領と次男のハンター氏を捜査するようウクライナのゼレンスキー大統領に圧力をかけたとされる「ウクライナ疑惑」。2人目の内部告発者が現れました。週末の欧米の主要メディアのトップニュースになりました。

ウォール・ストリート・ジャーナルは「CIA高官の弁護団が複数の内部告発者の代理になる」と報道。ワシントン・ポストもCIA高官の代理人の発言を大きく報じると同時に、共和党の議員が自身の政治生命を心配し始めたと伝えました。

「ウクライナ疑惑」で圧力を受けたトランプ政権が、2016年大統領選への介入をめぐる「ロシア疑惑」捜査で不正がなかったどうか、イタリア政府に協力を要請しました。トランプ大統領の指示を受けたバー司法長官がイタリアを訪問。権力の乱用だと痛烈な批判を浴びました。ニューヨーク・タイムズは、非常に異例な訪問だったと報じました。

主要メディアの報道を見る限りトランプ大統領が劣勢。トランプ大統領寄りのフォックスニュースを除いて大統領の対応をネガティブな視点で報じています。世論が反トランプに傾きかけています。

今週の下院では、CIA関係者を含む複数の高官や元高官が公聴会で証言します。ウォール街は、下院の弾劾をめぐる動きが勢いを増していることが、米中貿易協議にどう影響するか注目しています。香港の抗議デモ、中国と近い北朝鮮の新たな動きへの注目度も高まりつつあります。景気後退懸念が一服したアメリカの株式市場に、ワシントンの政治が影響する可能性があります。株式市場の地合いは弱くも、強くもありません。やや「灰色」です。
[October 06, 2019 NY172]

※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。

筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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