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「弾劾」めぐりウォール街に変化

2019/09/30 09:50

「見方が変わった」

アメリカ連邦議会下院のペロシ議長が、トランプ大統領に対する弾劾に向けた調査の開始発表を予定。9月24日火曜日の取引時間中にニュースが流れました。弱い消費者信頼感指数を受け軟調だったニューヨーク株式相場が一段安になりました。ペロシ議長は、株式市場の取引終了の1時間後に、司法や情報など6つの委員会に弾劾手続きのための調査を指示したことを正式発表しました。

ただ、翌25日に相場は反発しました。ペロシ議長を弾劾手続きに向かわせた「ウクライナ疑惑」に関し、ウクライナのゼレンスキー大統領との7月25日の電話会談の記録をトランプ大統領が公表。軍事支援との駆け引きを裏付けるくだりがなく、バイデン前副大統領の次男に対する捜査要請は1カ所だけ。弾劾するには「根拠が弱い」。ウォール街に「トランプ大統領は大丈夫」との楽観論が広がりました。

弾劾の動きは26日にさらに進みました。疑惑発覚のきっかけになった9ページの告発状が公表されました。ホワイトハウスが隠ぺいを画策したとの見方をにじませたものでした。情報機関を統括するトップが公聴会で証言し、「重大な問題」との認識を示しました。これを受け「当初の予想より問題は深刻」との懸念がウォール街に広がりました。

27日には、トランプ政権が、ニューヨーク株式市場で取引されている中国企業の上場廃止や、アメリカの公的年金による中国市場への投資を制限することなどを検討しているとブルームバーグが報道。CNBCは対中投資の制限措置がトランプ政権内で協議されていると後追い報道しました。アリババ、バイドゥ、JDドットコム、テンセントなど中国企業の株が全面安。中国との取引が大きいマイクロンなど半導体株の一株が売られました。

ダウは先週、前週比で114.82ポイント(0.4%)安い2万6820.25で引けました。S&P500は1%安の2961.79。テクノロジー株の寄与度が大きいナスダックは2.2%下げ7939.63で先週の取引を終えました。

「第3四半期最終日と第4四半期」

第3四半期(7-9月)の最終日と第4四半期の最初の取引が訪れる今週のニューヨーク株式市場では、トランプ大統領に対する弾劾をめぐる動き、米中の貿易に関するニュース、そして、ブレグジット(イギリスのEU離脱)の期限を10月31日に控えたイギリスの状況が影響しそうです。いずれも不確実性があり、ポジティブよりネガティブ要因になる可能性が高そうです。

コストコやペプシなどが決算発表を予定していますが、市場全体への影響は限定的になりそう。政治問題以外では、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁をはじめ複数のFRB幹部が講演を予定していて材料になる可能性があります。10月追加利下げの観測が後退するなか、どういう認識を示すか。

金融政策の方向を探る上で重視される経済指標も相場を動かす可能性があります。特に4日発表の9月の雇用統計が材料になりそう。1日の製造業に関する指標も注目されています。

「弾劾手続きの見通し」

アメリカの主要ネットワークTVは、毎週日曜日の朝、政治問題を取り上げるニュース・マガジンを放送します。今週の主要テーマは当然ながら下院の弾劾手続きでした。

告発状に30回以上も名前があがったトランプ大統領の個人的な法律顧問であるジュリアーニ元ニューヨーク市長がそれぞれのチャンネルのインタビューに応えました。冷静なジュリアーニ氏がABCのインタビューで大汗をかいて声を荒げたのが印象的でした。「何かを隠している」「後ろめたいことがある」との強い印象を視聴者に与えました。

対照的に、下院の情報委員会の委員長は冷静。弾劾手続きの動きが今週以降に活発化することを示唆しました。下院は、ポンペオ国務長官に召喚状を送り、大量の関連書類や国務省幹部の証言を要求しました。近い将来、告発状を書いた本人が議会で証言する見通し。下院が11月末の感謝祭までに弾劾の採決をする方向だと伝えられました。

弾劾手続きが株価にどう影響するか。どう進展するか不透明なため予断を許しません。歴史的に大統領に対する弾劾手続きは3例しかありません。ジョンソン第17代大統領は時代が古すぎて参考にならず。弾劾の下院での採決直前にニクソン大統領が辞任した1974年はS&P500が約13%下落しました。下院で弾劾が可決され、上院の弾劾裁判で無罪となったビル・クリントン大統領の場合はS&P500が28%上昇したとバロンズが伝えました。

トランプ大統領が民主党を徹底的に反撃することが予想されます。一方、議会では共和党の議員が弾劾にどの程度賛成に回るかが注目されます。トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は公表された7月25日の電話会談以外に2回の電話会談と1回の対面での会談実績があり、その記録が公表される可能性があります。2020年の大統領選に向けた動きが活発化、渦中のバイデン前副大統領を含め民主党の大統領候補者の発言も注目を集めそうです。

今週からはじまる第4四半期のニューヨーク株式市場は、米中貿易協議と弾劾が2大テーマになりそうです。10月は株価が大きく振れる傾向があることを歴史が物語っています。

[September 29, 2019 NY171]

※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。

筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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