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まだ高水準の米株、いつまで持つか

2019/08/26 09:44

「大統領が悪化させた心理」

ワイオミング州ジャクソンホールで開かれたカンザスシティ連銀主催の年次経済シンポジウム。会議冒頭のFRBのパウエル議長の講演にウォール街が注目。先週のアメリカの株式市場で最大の材料とされました。9月会合での利下げサイクル入り、もしくは大幅利下げを示唆するかもしれないとの期待が広がりました。

しかし、講演の前々日に公表されたFRBの前回会合(FOMC)の議事録や前日のFRB幹部の発言を受け、期待値が下がりました。パウエル議長は講演で、状況に応じて適切に対応すると述べましたが、金融政策について明言を避けました。20分程度の講演は予想通りの内容だったため、マーケットの反応は限定的でした。

株式市場が大きく反応したのはトランプ大統領のツイッターへの投稿でした。

中国政府が750億ドル相当のアメリカ製品・産品に9月1日付で最大10%の報復関税を発動すると発表。加えて、1月から適用を見合わせていたアメリカ車と自動車部品に対する25%関税を12月15日に再導入する方針を表明しました。それに激怒したトランプ大統領が、アメリカ企業に中国から即時撤退するよう要求しました。

米中貿易戦争が激化し、ニューヨーク株式市場では中国を主な製造拠点にしているアップルなどが大きく売られ、中国との取引が大きい半導体や製造業の主要企業が全面安の展開になりました。

ダウは23日の取引で623.34ポイント下げました。テクノロジー株の比率が大きいナスダックの下落率は3%に達しました。

ただ、週間ベースの下落率は限定的でした。ダウは257.11ポイント、率にして1%の下落。S&P500は前週比で1.4%安。ナスダックは1.8%の下げにとどまりました。

バロンズによりますと、S&P500の直近高値からの下落率は5.9%。テクニカル分析で「調整領域」入りとされるのは10%の下落です。S&P500は8月14日につけた直近の安値まで売られることはなく、年初と比較するとまだ13.6%高い水準にあります。

問題はいつまで株価が持ちこたえられるか。米中貿易戦争やトランプ大統領の動き次第と指摘されています。S&P500が「調整領域」入りした場合は、株式相場がさらに10~20%下がるとの予想があります。

「対中関税引き上げの衝撃」

先週の取引時間終了後に、トランプ大統領が9月1日からの3000億米ドル相当の中国製品に対する関税を当初発表の10%から15%に引き上げると表明。また、発動済みの2500億米ドル相当の中国製品に対する25%の関税を10月1日から30%に引き上げるともしました。

それらは、先週の株式相場にまだ織り込まれておらず、関税率引き上げの衝撃で今週初めの株式相場が大きく振れる可能性があります。最初に開く東京や上海市場、そしてヨーロッパの株式市場の影響を受ける可能性があります。

週末にアメリカのレイバーデー(日本の勤労感謝の日に相当)の連休を控えているため、ポジション調整が活発化するとみられます。

今週発表されるアメリカの経済指標では、ダラス、リッチモンド、シカゴなどの景気指数や耐久財受注、消費者信頼感指数が材料になる可能性があります。

決算は、ティファニー、家電小売り大手のベストバイ、食品大手のキャンベル・スープ、コンピュータのデルなどが発表を予定しています。

「トランプ大統領が後悔」

フランスのビアリッツで開かれたG7首脳会議で、トランプ大統領が自身の通商政策に弱気な一面をみせたと伝えられました。トランプ大統領が中国に対する強硬姿勢を緩和するのではないかとの期待がありましたが、ホワイトハウスの声明で期待が後退しました。

ホワイトハウスは25日朝、トランプ大統領が対中関税の引き上げが不十分だったと後悔しているとの声明を発表しました。トランプ政権が中国に対し強気な姿勢を貫くとの方針を明確にし、G7をめぐる報道を打ち消すものです。

週末のアメリカの主要ネットワークの政治番組は、いずれも米中貿易戦争を大きく取り上げ、関心の高さを示しました。ウォール街の注目度も当然ながら高い。9月1日の関税発動を控え、今週のニューヨーク株式市場は米中の駆け引きの影響を大きく受けそうです。まずは、対中関税引き上げで中国がどう反応するか。ウォール街の注目が集まっています。地合いは良くありません。

[August 25, 2019 NY166]

※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。

筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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