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市場の信号「なにか非常におかしい」
2019/08/13 10:27
「大振れ後の小幅な下落」
ニューヨーク株式相場の展開が不安定です。
中国人民銀行が1米ドル=7元を超えた人民元の下落を容認した先週月曜日、ニューヨーク株式市場の主要な株価指数であるダウが767ポイント、率にして2.9%下落しました。翌火曜日に300ポイント超戻しましたが、週後半に再び不安定になりました。
ただ、ダウは前週比で197.57ポイント下落と、週間下落率は0.7%にとどまりました。S&P500の週間ベースの下落率は0.5%。テクノロジー株の寄与度が大きいナスダックは0.6%安でした。大荒れとの印象がありますが、振り返ってみると下落率は限定的でした。
一方、ニューヨークの商品市場では金先物相場が大幅上昇、2013年以降で初めて1オンス1500米ドル台に乗せました。米10年債の利回りが大幅低下、米30年債の利回りが一時2.12%に低下、2016年以降の最低水準をつけました。
バロンズは、「なにかが非常におかしい」と市場が信号を発していることは明らかだと解説しました。
ヘッジファンドが上昇基調に乗り遅れただけとの見方もありますが、第2の急落があるとの見方もあります。
「米中貿易戦争と債券市場」
主要企業の決算発表がピークを過ぎました。今週は、シスコ・システムズ、中国のテンセントやアリババ、小売り大手のウォルマートやJCペニー、農機具大手のディーアなどが四半期決算の発表を予定しています。
経済指標では、火曜日の消費者物価指数、木曜日の小売売上高、ニューヨーク連銀の製造業指数、鉱工業生産指数などが材料になる可能性があります。
マーケットの関心は、米中貿易協議の行方。人民元の動きやトランプ大統領の中国に関する発言で大きく振れる可能性があります。
CNBCは、今週も不安定な展開が続く可能性があると解説しました。決算発表が少ないので、他の市場の影響を受ける可能性があるとしています。特に、リセッション(景気後退)を示唆する米国債利回りの動きに注目だと加えました。
「米中貿易協議いつまで」
トランプ政権が3000億米ドル相当の中国製品に10%関税を9月1日に発動すると表明、中国の通信機器大手ファーウェイとの取引再開の許可を先送りする方針を示しました。
一方、中国は人民元を切り下げ、アメリカ産農産品の購入を停止すると発表しました。
貿易をめぐる高官協議が9月にワシントンで再開する方向ですが、争点が以前より大幅に増えました。中国の習近平国家主席が「待つ」戦略に出て、米中貿易協議が2020年11月3日のアメリカ大統領選まで終わらないのではないかとの見方が増えました。
ゴールドマン・サックスのチーフ・エコノミストのハチウス氏もその一人。CNBCによりますと、ハチウス氏は最新の顧客向けメモで、「対中関税が9月に予定通り発動され、2020年の大統領選前の米中貿易協定合意はもはや期待できない」とコメントしました。
その上で、米中貿易戦争のアメリカ経済への影響は当初の予想より大きく、心理悪化や不透明感の高まりにつながっていると指摘。アメリカの第4四半期の成長見通しを従来の2.0%から1.8%に引き下げました。「貿易戦争でリセッション(景気後退)入りする恐れが高まっている」とコメントしました。
今週は目立ったイベントが少なく、米中の貿易をめぐる動きに一段と敏感に反応することが予想されます。地合いはよくありません。
[August 11, 2019 NY164]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
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