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不安定化に備える、いまは大丈夫でも

2019/05/20 09:19

「奇妙な落ち着き」

アメリカが10日に中国に対する関税率を引き上げ、中国が13日に報復関税を発表。トランプ大統領は追加する形で、15日に中国を代表する通信機器会社ファーウェイへの部品販売を全面禁止する大統領令に署名。緩和に向かうと期待された米中貿易摩擦が深刻化しました。

世界経済のトップ2による貿易戦争が激化したにも関わらず、ニューヨーク株式マーケットは奇妙とも言える落ち着きをみせています。

先週月曜日は約2.5%下げましたが、火曜日以降は比較的静かな展開でした。ダウは週間ベースで178ポイント、率にして0.7%安。S&P500の週間下落率も0.8%にとどまりました。ナスダックは1.3%下げました。

産業セクターにとらわれず安定収益を目指すゴールドマンサックスが選ぶ企業グループの株式。バロンズによりますと、海外市場での展開が大きい企業グループの株式の下落率は5.5%。これに対し国内市場が中心の企業グループの株式の下落率はわずか2%にとどまりました。貿易戦争の海外経済への悪影響が、アメリカ経済より深刻だと投資家が考えていることを示唆しています。

ニューヨーク株式マーケットでは、米中貿易戦争の影響はこれまでのところ限定的。FRBが政策金利を据え置く中で、高い関税率がインフレ率を少し押し上げる可能性があり、株式にとっては悪くないと一部のストラテジストが考えているとバロンズが伝えました。

「米中、パウエル議長、ホームデポ」

今週のニューヨーク株式マーケットでは、引き続き米中の貿易戦争、協議をめぐる動きが最大の材料になると予想されています。先週末には、中国の態度が後退、米中貿易協議が完全に失速したと報じられました。トランプ大統領の不規則発言やツイート、中国発の情報に株価が敏感に反応しそうです。

貿易戦争の激化で不透明感が広がる中、パウエル議長を含めFRB幹部が発言する機会があります。米アトランタ連銀の年次総会が開催され、20日夜にパウエル議長が講演するほか、複数のFRBの地区連銀総裁が発言します。今週は週を通してFRB幹部が講演などを予定しています。

火曜日がホームデポ、ノードストローム、JCペニーなど、水曜日はターゲット。小売各社が今週相次いで四半期決算を発表します。木曜日には家電量販店のベストバイが決算発表を予定しています。

メモリアルデーが絡む連休を控え、週後半は薄商いになることが予想されます。

「パニックではないが」

貿易戦争が激化する中、アメリカの大企業の工場、設備などへの投資が第1四半期に減速したとウォールストリートジャーナルが週末に報じました。20%増だった前年同期から企業投資が減少したとしています。

一方、バロンズは、中国からの輸出がアメリカのGDPに占める割合はわずか2.5%。一方、アメリカからの輸出が中国のGDPに占める割合は3.7%。米中間の貿易が減っても経済全体への影響が限定的になることを示唆しているとしています。

バロンズは、米中貿易戦争が激化してもパニックになる必要はないが、個別に影響を受ける銘柄があると伝えました。アップル、シスコシステムズ、クアルコムなどが中国との貿易額が大きいとしています。中国政府が保有する1.1兆米ドル規模の米国債を全てもしくは一部を売却するリスクがあるが、米国債全体の22兆米ドルと比較すると小規模だとしています。

トランプ大統領は先週、自動車の関税についての判断を6カ月先送りすることを決めました。同時に、ライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表に日本やEUとの貿易協議を加速させるよう命じました。トランプ大統領は25日から訪日し、日本との貿易、自動車の関税や数量制限に関して発言する可能性があります。

貿易戦争が中国から日本、EUに拡大すれば、アメリカ経済や世界経済に影響することは必至。株式マーケットは、アメリカと主要国の貿易協議を警戒しています。パニック心理にはならないものの、一段と慎重になる投資家が増えそうな状況。株式相場のボラティリティ(変動率)がいずれ大きくなる。こうした見方が根強くあります。

[May 19, 2019 NY 152] 

※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。

筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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