週刊2分でわかるNYダウNYダウ平均株価の情報をタイムリーに、より分かりやすくお伝えするレポート
復活した「押し目買い」
2019/03/18 09:29
「弱い指標を無視」
ウォール街で先週「Buying the dip」が意識されました。日本語で「押し目買い」と訳されます。将来の値上がりを見込んで、何かの要因で下がった銘柄を買うということ。ブル(強気)マーケットでみられる現象です。バロンズの最新号は「押し目買いが生きていて、うまく機能している」と先週のマーケットを総括しました。
エチオピア航空の旅客機が墜落し乗客乗員157人全員が死亡。去年10月に墜落したインドネシアのライオン・エアと同じボーイング社製の「737MAX」だったため、類似性があるとして世界の航空当局が運行停止を命じました。ドル箱だった「737MAX」が世界の空から消え、ボーイング株が大きく売られました。
先週は、進展しているとされた米中貿易協議の先行きが不透明になりました。トランプ大統領と習近平国家主席の米中首脳会談が当初計画の3月末から4月以降に延期されました。
景気減速を示す経済指標の発表も相次ぎました。ニューヨーク連銀の製造業景況指数が予想を大幅に下回りました。鉱工業生産も弱かった。
ネガティブな材料が多いにも関わらず、先週のニューヨーク株式相場は堅調でした。週間ベースで、ダウは398ポイント、率にして1.57%上昇しました。構成銘柄のボーイングが大幅に下落しましたが、アップルなどが大幅に上昇し相殺しました。テクノロジー株の寄与度が高いナスダックは3.78%高でした。
幅広い銘柄で構成され、ニューヨーク株式マーケット全体のトレンドを反映するS&P500は2.89%上昇。去年10月8日以来の高水準である2822ポイントで1週間の取引を終えました。押し目買いが株価を支えたと言えます。
なぜ押し目買いが増えたのか。ベア(弱気)相場に近づく局面が何度かありましたが、その都度反発したことで、投資家に安堵感が広がったことが影響したと指摘されました。バロンズは、コンテナ出荷量の指数であるHARPEX指数、鉄や亜鉛などのベースメタル、バルティック海運指数など景気を反映する指数や相場がいずれも強いことから、全体的に投資家がアメリカ経済を楽観視していることが背景にあると解説しました。
「FOMCを注視」
今週のニューヨーク株式マーケットの最大の材料は火曜日と水曜日に開かれるFRBが金融政策を決める会合(FOMC)です。政策金利が据え置かれると幅広く予想されていますが、同時に発表されるFOMCメンバーの見通しが相場に影響しそうです。特に、金利見通しが3ヵ月前の予想からどう変化しているかが注目です。会合後のパウエル議長の記者会見のトーンも材料になる可能性があります。
21日木曜日に発表されるフィラデルフィア連銀の製造業景気指数、22日の製造業とサービス業の購買担当者景況指数(PMI)も注目されています。
「原油も節目近い」
ニューヨーク原油相場が節目の1バレル60米ドルに接近しました。ウォールストリートジャーナルは、このところの上昇で相場がクロスロード(交差点)に到達したと伝えました。
節目を本格的に超えて相場が上昇すると心理がさらに改善するとの見方がある一方、経済の先行きが不透明なため一段高に懐疑的な見方もあるとウォールストリートジャーナルは解説しました。
[March 17, 2019 NY 143]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール

松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
- ※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- ※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
- ※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
- ※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
バックナンバー
-
2021/01/18 11:06
米株式相場軟調、次の展開は!?
「ハロウィーン以来の下落率」ニューヨーク株式相場は先週1週間を通して軟調でした。目立った売り材料が出たわけではありませんが、新型コロナウイルスの世界的…
-
2021/01/11 09:59
「ブルーウェーブ」下の米株式相場
「悪材料に反応薄」2021年の最初の取引となった1月4日の週は材料が豊富でした。注目されたジョージア州の上院決選投票では民主党が2議席を確保。上院の勢力図は…
-
2021/01/04 09:58
材料豊富な2021年最初の週
「ダウは2020年に年間7.25%上昇」2021年の取引が始まります。2020年に大幅に上昇した株式相場がどう展開するか注目されます。クリスマスと元日に挟まれた2020年…
-
2020/12/28 11:29
追加経済対策とクリスマス商戦
「主要指数まちまち」クリスマスの影響で3.5日しか取引日がなかった先週。小型株の上昇が注目を集めました。大型株の指数であるダウ工業株30種平均は前週末比0.1…
-
2020/12/21 11:42
ウォール街、2021年に強気
「悪材料に反応薄」新型コロナウイルスの新規感染者や死者、入院患者数が最多を連日更新。南カリフォルニアでは集中治療室(ICU)の空きがゼロになり規制を再強…